お知らせ
2025年01月15日
【すこやか健保☆定期便のご案内】政権は「部分連合」に踏み切るも 全世代型社会保障制度に向けた改革は待ったなし(1月号)

政権は「部分連合」に踏み切るも
全世代型社会保障制度に向けた改革は待ったなし

衆院選で過半数割れした石破政権は自公両党に野党の国民民主党を加えた事実上の「部分連合」に踏み切りました。
当面は予算や税制などに限られている協議対象が広がれば、国民民主党が掲げる「後期高齢者窓口負担の原則2割引き上げ」も検討課題になるはずです。
2025年問題が現実のものとなった今、全世代型社会保障制度の構築に向けた改革はまさに待ったなしの状況です。
過度の期待は禁物ですが、「部分連合」はその一里塚になるかもしれません。

 

かすんだ2025年問題

2025年を迎え、幾星霜(いくせいそう)を経て600万人弱になった「団塊の世代」(1947~49年生まれ)は全員が75歳以上の後期高齢者になりました。前期高齢者(65~74歳)が後期高齢者になると、1人当たり平均で35万円ほど医療費が高くなるため、「団塊の世代」全体で2兆円ほど増える計算です。介護サービス費用も膨らみます。
しかし、増大する医療費や介護サービス費用をどう賄うのかという「2025年問題」への危機感は希薄というのが実情です。パンデミック(世界的大流行)となった新型コロナウイルス感染症が一段落するまでは、コロナ対策が優先され、社会保障のみならず制度改革は進みませんでした。補正予算は膨らみ、国債発行残高が10000兆円を超える借金財政からの脱却は遠のきました。感染拡大による受診抑制が医療保険の財政悪化を見えにくくした時期もありました。
しかし、健保連が昨年10月に公表した2023年度健保組合決算見込みによると、1380組合の経常収支は1367億円の赤字を計上し、5割超の組合が赤字でした。後期高齢者支援金は対前年度比9.6%(1884億円)増と高齢者医療全体の拠出金の伸び(7.3%)を上回り、2025年問題が影を落としています。健保組合財政は24年度も賃上げによる保険料収入増が見込まれていますが、高齢者拠出金の増加が続く見通しです(図1参照)。

小粒な制度改革

給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というわが国の社会保障制度を年齢に関係なく個々人の能力に応じて負担する「全世代型」に転換する取り組みは、安倍政権から菅、岸田、石破の各政権に引き継がれてきました。
しかし、カギとなる「現役世代の負担軽減」は一定以上の収入がある後期高齢者の窓口負担割合2割引き上げが目につく程度です。ただ、一定以上の収入要件を単身世帯は200万円以上、複数世帯は320万円以上としたため、対象者は後期高齢者の23%に当たる約370万人にとどまりました。また、現役世代の負担軽減額も年間約880億円に過ぎず、効果は限定的でした。
政府の全世代型社会保障構築本部が2023年12月にとりまとめた「医療・介護制度等に関する改革工程」(2028年度までに検討から抜粋)(図2参照)をみても、過去の取り組みの延長線上にあるものや積年の課題が目立ち、制度の根幹に踏み込んだものは見当たりません。

「70―70」構想の検討を

健保連は同決算見込みの中で、医療制度改革に関連して①前期高齢者(65~74歳)の窓口負担を原則3割に引き上げる、②後期高齢者(75歳以上)の現役並み所得者(3割負担)の対象を拡大し、75~79歳の窓口負担は原則2割に引き上げる―などを課題として挙げています。また、前期高齢者の年齢区分を「70~74歳」に変更することも指摘しています。
私見ですが「70歳」に着目するなら、高齢者医療制度も介護保険制度も対象年齢は70歳以上、窓口(利用者)負担は原則2割(現役並み所得者は3割)に統一する構想があってもよいのではないでしょうか。高齢者を前期、後期に分けて社会保障制度の仕組みを考えることとは決別するわけです。平均寿命、健康寿命の伸びや65歳以上の就業状況などに照らせば、高齢者医療・介護保険制度の「70―70」構想は夢物語とは言い切れなくなっています。パラダイム転換がいまほど求められている時はありません。

監修:金野 充博先生
元国際医療福祉大学 総合教育センター長・教授

 

Column

高額療養費の自己負担限度額

医療費の窓口負担が過重にならないよう、自己負担限度額を超えた分を医療保険が支給する高額療養費制度は、「応能負担」に基づき、かかった医療費が同じ場合、低所得者ほど限度額が低く、所得が増えるに従って限度額が高く設定されます。
70歳未満の限度額は2015年1月に、70歳以上の限度額は2017年8月と18年8月の2回に分けて見直され、所得区分を細分化した上で、高所得者の限度額を引き上げました。高額医療費の件数増加を背景に、限度額の引き上げに向けた議論が進められています。

 

健康マメ知識

健康寿命

人生80年時代が定着して久しく、わが国は世界有数の長寿国として知られています。2024年の「平均寿命」は男性が81.09歳、女性は87.14歳になりましたが、医療や介護を考える上で重要なのは「健康寿命」(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)という考え方です。
健康寿命(男性72.68歳、女性75.38歳:2019年時点)が平均寿命に近づけば近づくほど、老後の生活は安定し、医療費や介護費用も節約できます。健康寿命を延ばすためには、心身の変調に気付いて早めに手を打たなければなりません。日本老年医学会が提唱した「フレイル」は、健康寿命に問題があるかどうかをチェックするための指標です。

 

提供元:健康保険組合連合会(すこやか健保2025年1月号) **禁無断転載**
すこやか健保は健康保険組合連合会ホームページより一部ご覧いただけます。関連リンクよりご覧ください。

 

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