お知らせ
2024年05月15日
【すこやか健保☆定期便のご案内】気にしすぎる必要はないと思うけど…気になる「体臭」。脇の臭い、解消できますか?(5月号)

気にしすぎる必要はないと思うけど…

気になる「体臭」。脇の臭い、解消できますか?

自分の体の臭いを気にする、そんな傾向は年代を超えて広がり、ドラッグストアやコンビニの棚には、いろいろなデオドラント商品が並んでいます。

日本人はとても「体臭」に敏感で、近年、わきが外来を設ける医療機関も増えています。

今回は気にする人が多い「脇の臭い」について、形成外科専門医として治療経験が豊富で、学会発表もされている日本橋形成外科の網倉良安院長にお聞きしました。

脇の臭いにはアポクリン腺が関係している

体臭で悩む多くの人が気にするのは「脇の臭い」、いわゆる〝わきが〟と呼ばれる症状です。医学用語では「腋臭症(えきしゅうしょう)」といいます。私たちの体には、エクリン腺とアポクリン腺という2種類の汗腺があります。エクリン腺は全身のいたるところにある汗腺で、汗はサラサラとした水分が主体であるため蒸発しやすく、拭き取ればあまり臭いは気になりません。

わきがの原因となるのはアポクリン腺から出る汗です。汗自体は無臭ですが、汗に含まれている皮脂(低級脂肪酸)が皮膚表面の細菌により酸化して不快な臭いを発すると考えられています。臭いだけでなく、下着やシャツの黄ばみの原因にもなります。

アポクリン腺は、脇の他に、耳の穴(外耳道)、乳輪、陰部などにあり、思春期に発達します。とくに耳のアポクリン腺はわきがとの関係が強く、わきがの人はほとんどが湿った耳垢(軟耳垢)です。軟耳垢の人の約8割はわきが症状を持つというデータもあります。逆に乾いた耳垢(乾耳垢)の人のわきがはまれです。

臭いの強弱はアポクリン腺の数や分泌物の質などで個人差がありますが、これに「ABCC11遺伝子」が関係していることが最近の研究で分かりました。わきがは遺伝的傾向を持つ症状なのです。

わきが予防には細菌を繁殖させない工夫を

臭いは判断基準があいまいで、自分でわきがと気付くのは難しく、周囲の人も指摘しづらい現実があります。次の2つが当てはまれば、わきが傾向にあると考えられます。

●耳垢が湿っている

●親のどちらかがわきが、もしくは耳垢が湿っている

予防には、細菌の繁殖を抑えるため「こまめにシャワーを浴びる」「シャワー後に市販の制汗剤を使う」「脱毛する」などが効果的です。また臭いの原因となる動物性タンパク質や脂肪の摂取を控えた「和食中心の食生活をする」、たばこの臭いは体臭と混じると不快感が増すので「禁煙する」、化学繊維は臭いを強くさせる傾向があるといわれますので「天然素材を着る」などを試してみてください。また緊張状態が続くと汗の量が増えるので、リラックスした日常生活を送りましょう。

わきがは症状によって治療が異なる

医療機関の診断では「ガーゼテスト」が行われます。ガーゼを脇に挟み、汗ばむ程度の運動を数分して、医師が臭いをかぎ判定する診断法です。レベル1「臭わない」、レベル2「ごくわずか」、レベル3「鼻を近づけると分かる」、レベル4「鼻を近づけなくても分かる」、レベル5「手に持っただけで分かる」に分類されます。

レベル1、2では外用薬(塩化アルミニウムを含んだ制汗剤など)や脱毛、ボトックス治療などが行われます。ただボトックスはエクリン腺だけに作用し汗の量を抑えて細菌の繁殖を防ぐ効果があるため、腋臭症と多汗症を併発しているケースが適応となります。

レベル3以上のケースでは、患者の年齢や希望を考慮して手術を行うことがあります。主な手術は保険適用されている「剪除法(せんじょほう)(皮弁法)」です。脇を1、2カ所4〜5センチ程度切開して、皮膚を裏返し目視しながら汗腺をはさみで切除します。皮膚の下に血液がたまらないように血を抜くためのドレーンという管を入れ縫合します。そして皮膚と皮下組織をしっかり固定するために綿と包帯で患部と肩関節を固定します。

近年、特殊なシェーバーを使う新しい手術法「クワドラカット法」も行われています。脇の皮膚を数カ所5ミリ程度切開し、シェー

バーを入れて汗腺の切除と吸引を行います。保険適用外の治療ですが、剪除法より傷口が小さく、術後の経過が早いのが特徴です。

わきが治療にはさまざまな治療法があります。「脇の臭いは体質」と諦めずに、形成外科や皮膚科のわきが治療に精通した医師に相談することをお勧めします。

監修:網倉良安先生

日本橋形成外科・皮膚科・美容外科院長

医学博士 形成外科専門医

Column

わきがを治療するのは日本だけ?!

わきが治療が行われている国は、日本以外では韓国や台湾、そして中国の一部だけというのをご存じですか。欧米をはじめ、その他の国や地域ではわきがや体臭は個人の生理学的現象の1つと捉えられ、不快に思う人はあまりいないのです。

最近の研究で16番目の染色体にあるABCC11遺伝子が、わきがや軟耳垢に関係することが解明されました。そうした研究を通して、世界中のほとんどの人がわきがや体臭を持っているのに対して、日本人は「無臭」に近い人が多いことも分かりました。

体には400万個ほどの汗腺があり、わきがに関係するアポクリン腺は100万個ほどです。しかし体臭が強いとされる人たちは日本人の数倍のアポクリン腺を持っているといわれます。日本人が体臭を気にするのは「無臭」に近い人が多いからかもしれません。

健康マメ知識

臭いがないのに「くさい」と悩む人が増加中

昨今のテレビやネットでは、制汗や消臭、芳香などの効果をうたうデオドラント商品の宣伝でにぎわっています。日本人は、脇の臭いに限らず、体臭を極度に嫌う傾向があります。そのためか、ほとんど体臭がないにもかかわらず、自分は「くさい」のではと悩む人が増えています。脇だけでなく、口臭、足の臭い、頭の臭い、汗の臭いなど臭いの対象はさまざまです。

中には臭いを抑えるために制汗剤や消臭剤を過剰に使用する人、一日に何度も下着を変えたり気になる場所を洗ったりする人がいます。こうした症状は「自臭症」「自己臭恐怖症」などと呼ばれ、精神科領域の疾患と考えられます。臭いのせいで「人から避けられる」「仕事がうまくいかない」などと悩み、うつ状態に陥ることもある病気です。

提供元:健康保険組合連合会(すこやか健保2023年3月号) **禁無断転載**

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