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2024年03月15日
【すこやか健保☆定期便のご案内】テレビやスマホの音が突然、聞こえなくなった!「突発性難聴」なら早急の治療が必要です(3月号)

テレビやスマホの音が突然、聞こえなくなった!「突発性難聴」なら早急の治療が必要です

昨日までなんの問題もなかったのに、朝起きたら、急に耳の聞こえが悪くなってしまった……

その症状、「突発性難聴」かもしれません。

歌手の浜崎あゆみさんやスガシカオさんが発症して、テレビやネットで大きく報じられたので知っている人も多いのではないでしょうか。

今回は国際医療福祉大学三田病院の聴覚・人工内耳センター長として、高度難聴や人工内耳など最先端医療に携わる岩崎聡先生にお話をお聞きしました。

突然発症する原因不明の難聴。近年増加傾向が続く

突発性難聴は、徐々に聞こえが悪くなる加齢性の難聴とは異なり、それまで全く問題がなかった人に発症する急性の難聴です。ごくまれに両耳で起こることもありますが、ほとんどは片側の耳に発症します。聞こえが急激に悪くなり、同時に耳鳴りや目まい、耳が詰まった感覚(耳閉感)が起こることもあります。

音は外耳(がいじ)から入り鼓膜を振動させ、その振動が中耳(ちゅうじ)にある耳小骨などを通して内耳(ないじ)の「蝸牛(かぎゅう)」に伝わります。その振動を蝸牛にある「有毛細胞」が電気信号に変え、聴神経を経由して脳に伝えます。こうして初めて私たちは音を認識することができるのです。

難聴には音を伝える外耳や中耳の障害で起こる「伝音難聴」と、内耳や聴神経の障害で起こる「感音難聴」に分けられます。突発性難聴は感音難聴の一つで、蝸牛の有毛細胞が障害を受けることで発症する病気です。有毛細胞の血流障害、ウイルス感染、ストレス過多、過労、睡眠不足などによって起こると考えられていますが、はっきりとした原因は不明です。10万人当たりの発症数は1972年には2・5〜3人でしたが、2001年には27・5人と増加し、今後も増加傾向が進むと考えられています。

2日以内、遅くても1週間以内には専門医の治療が必要

難聴というと高齢者の病気と思いがちですが、突発性難聴は幅広い年代で起こり、特に40〜60歳代で多発しています。「聞こえがおかしい」「耳鳴りや目まいがする」などの症状を感じたら、すぐに耳鼻咽喉科のある医療機関を受診してください。

突発性難聴のこうした症状は1度しか起こりません。そのため病気とは気が付かず、治療のタイミングを失ってしまうことがあるのです。恐ろしいのは、初期治療が遅れると難聴が残ったり(一側性難聴)、片側の聴力を失ったりすることです。片側の聴力を失った状態を「片側聾(ろう)」と言います。

できれば発症から2日以内、遅くとも1週間以内の受診が必要です。仕事や家事などで、すぐに受診ができない場合は、まずは安静にしましょう。

一般的な突発性難聴の治療では、副腎皮質ステロイドの内服や点滴による薬物療法が行われます。他にも血管拡張薬、ビタミンB12製剤、代謝促進薬などが使われることもあります。

こうした治療で改善しない場合は、これまで補聴器の使用しか選択肢がありませんでした。しかし、最近は新しい治療法が試みられています。

「人工内耳」を使った最新治療が始まっている

薬物療法では、内服や点滴で使用していた副腎皮質ステロイドを、直接鼓膜内に注射する「ステロイド鼓室内注入療法」が行われるようになっています。通常の薬物療法では改善しないケースやステロイドの全身投与ができないなどのケースで有効です。

さらに「人工内耳」を使った治療も始まっています。人工内耳は外部マイクで拾った音を電気信号に変え、内耳にある蝸牛に埋め込んだ電極で直接聴神経を刺激し、音を聞き取ることができるようにする最新の医療機器で、1994年に保険適用になりました。ただ両側難聴に限定され、突発性難聴で起きやすい一側性難聴は保険適用になっていません。当院では人工内耳を使った先進医療「一側性高度感音性難聴に対する人工内耳挿入術」を2021年から始め、現在保険適用を目指しています。

難聴は、命に関わることが少ない病気のため、どうしても他の病気に比べて軽視されやすい傾向があります。とくに突発性難聴による「一側性難聴」は、片耳が聞こえているため、さらなる治療を諦めてしまうケースも多く見られます。難聴に対する治療法は日々進化しています。諦めず難聴治療に詳しい専門医に相談することをお勧めします。

監修:岩崎 聡先生

国際医療福祉大学三田病院

耳鼻咽喉科 聴覚・人工内耳センター長 医学部教授

Column

一側性難聴を軽視してはいけない

片側が聞こえにくい状態の「一側性難聴」は、両側が聞こえない難聴に比べて、日常生活では大きな不自由がないと考えられがちです。静かな空間や一対一の会話ならなんとか過ごせるかもしれません。しかし、騒音が多い街中や多人数の声が交錯する会議、見えない後方からの音などは聞き取りにくいのが実情です。

そのため常に緊張を強いられ、日々の生活の質(QOL)は大きく低下します。聞こえが悪いため会話が弾まなくなったり、誤解を与えたりして円滑なコミュニケーションが難しくなることも。徐々に会話を避け、外出をやめ、引きこもりがちになってしまうケースも見られます。さらに心理的に追い込まれ、うつ症状や認知症の引き金になることもあります。聞こえの異常を感じたら、迅速な受診と適切な治療が大切です。

健康マメ知識

最近増えている「音響外傷」。ヘッドホンが原因に?!

「音響外傷」とは、大音量の音楽などを聞くことで起こる難聴のことです。以前はロックコンサートやクラブの大音量が原因で発症するケースが多くみられました。しかし最近は、スマホでイヤホンやヘッドホンを使って長時間音楽やゲーム音を聞くことでの発症が増えています。そのため“ヘッドホン難聴”とも呼ばれます。コンサートなどと違い、徐々に聞こえが悪くなる傾向があるため、気が付かないケースも少なくありません。米国でもヘッドホン難聴が問題視され、「60・60セオリー」という対策が行われています。音量は最大値の60%以下にして、連続使用時間は60分以内にするというものです。

当てはまる人はぜひ、参考にしてください。

提供元:健康保険組合連合会(すこやか健保2023年3月号) **禁無断転載**

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