お知らせ
2023年12月15日
【すこやか健保☆定期便のご案内】日々変わるハラスメント 被害者にも加害者にもならないために(12月号)

日々変わるハラスメント。

被害者にも、加害者にもならないために

言葉や行動によって、相手に精神的・身体的な苦痛を与える行為が「ハラスメント」です。

これまでパワハラやセクハラ、マタハラなどが問題視されてきましたが、社会の変化とともに新たなハラスメントも生まれています。

ハラスメントが起こる原因と、その対策について考えます。

職場のメンタルヘルスに詳しい横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長の山本晴義先生にお聞きしました。

意図する、意図しないは関係ない

厚生労働省が公表した2021年の労災補償状況調査では、「心理的負荷による精神障害」での労災認定者は629人と過去最高になりました。17年が506人でしたので大幅な増加といえます。この中にはハラスメントが原因と考えられるケースも多く含まれていると思われます。

ハラスメントが起こると、被害者はメンタル面の負担から、休職や退職を余儀なくされることがあり、さらに深刻な事態を招くケースもあります。また会社にとっても、ハラスメントが横行することは企業の信用・信頼を大きく揺るがし、業績にも深刻な影響を与える問題となります。

ハラスメントとは、意図する、意図しないにかかわらず、相手に不利益や損害を与える行為、また個人の尊厳や人格を侵害する行為を指します。「意図する、意図しないにかかわらず」というところがとても重要です。

あなたがハラスメントだと思っていなくても、あなたの言動を相手がどう感じ、どう受け取ったかがポイントになります。つまり、誰でもが加害者(行為者)に、また被害者になる可能性があるのです。まずは加害者にならないため、ハラスメントをよく知ってください。

時代背景の変化で変わるハラスメント

職場で問題視される主なハラスメントには、職場内の優位性を背景にした「パワハラ(パワーハラスメント)」、性的に不快な言動を取る「セクハラ(セクシャルハラスメント)」、妊娠を理由にした「マタハラ(マタニティーハラスメント)」があります。特にパワハラは上司から部下、先輩から後輩、男性から女性といった「職場内の優位性」を背景に行われるので、セクハラやマタハラとセットになっているケースも多く見られます。別表の「典型的なパワハラ例」を参照し、日々の行動と照らし合わせてみてください。

ただ、この「優位性」は、時代や社会環境とともに変化するものでもあります。例えばITやAIなどに不慣れな上司や先輩に対して、部下や後輩からの侮辱や無視、過大な要求といった行為もハラスメントにあたります。近年では女性管理職から男性部下へのハラスメントも増加傾向にあるようです。また数年来のコロナ禍で、コロナ罹患者(りかんしゃ)やワクチン未接種者へのハラスメント、リモート勤務の増加によるハラスメントも現れています。

一人で悩んだり、我慢したりしないことが大切

「これはハラスメント?」と感じたときに大切なのは、一人で悩まないことです。2020年に厚生労働省が行った実態調査では、パワハラを受けた際の相談相手として「同僚」「上司」「家族や友人」などが多くあげられていましたが、「何もしなかった」が最も多いという結果も出ています。

社内外を問わず、あなたが信頼できる相手に相談することが大切です。話すことはメンタルの維持に大きく役立ち、落ち着きを取り戻して、物事を客観視するための助けとなります。そして、「これはハラスメントだ」と思う場合には、社内のハラスメント相談窓口を利用しましょう。社内にそうした窓口がなければ、労働基準監督署や市区町村の労働相談窓口、法テラスなどに相談してみるのもいいでしょう。

勤労者メンタルヘルスセンターの「勤労者心のメール相談」は創設から20年以上が経ち、相談件数は17万件を超えています。ハラスメント関連の相談も多く寄せられますが、加害者も被害者も大きなストレスを抱えているケースが多く見受けられます。自らのストレスと上手に向き合う方法を一人ひとりが身につけることが、ハラスメントの防止につながると考えます。

できれば、普段から職場の同僚とコミュニケーションを密にして、ハラスメントについて話し合ってみてはどうでしょうか。ハラスメントを我慢したり、容認したり、隠したりすることのない職場をみんなでつくることが大切です。

◎こんな言動は「典型的なパワハラ」です!

①身体的な攻撃

暴行、傷害

②精神的な攻撃

脅迫、侮辱、暴言

③人間関係からの引き離し

隔離、仲間外し、無視

④過大な要求

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害

⑤過小な要求

業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること、仕事を与えないこと

⑥個の侵害

私的なことに過度に立ち入ること

監修:山本  晴義先生

医学博士・(独)労働者健康安全機構 横浜労災病院

勤労者メンタルヘルスセンター長

Column

増え続けるハラスメントの種類

顧客による嫌がらせである「カスタマーハラスメント」、ソーシャルメディアを使った「SNSハラスメント」、育児休暇を取る男性への「パタニティハラスメント」、就活生への「就活ハラスメント」、コロナ禍での「コロナハラスメント」、性的マイノリティーへの「SOGIハラスメント」、国籍や人種に対する「レイシャルハラスメント」など枚挙に暇(いとま)がありません。さらにハラスメントではない言動をハラスメントと騒ぐ「ハラスメントハラスメント」なるものまで現れています。子どものいじめは大きな社会問題ですが、ハラスメントも大人のいじめと言えるかもしれません。

日々増え続けるハラスメント、その根底には自分と異なる考え方や行動をする人を排除しようとする、自らの優位性を保つ、そんな意識が隠れているようです。

健康マメ知識

パワハラは会社に対応義務がある

男女雇用機会均等法や育児・介護休業法で防止措置が法制化されていたセクハラ、マタハラに次いで、2020年6月に通称、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が施行されました。これはパワハラに

よって職場環境が悪化しないための雇用管理上の措置を事業主に課すものです。「パワハラ防止の姿勢を明確にして、周知・啓発に努める」「相談窓口を設け適切に対応する」「事後の対策かつ適切な対応を行い再発防止の対策をとる」「関係者のプライバシーを保護し、相談を理由に不利益が生じないようにする」などの措置が義務付けられています。

当事者だけでなく、経営者や管理職に就く人たちが、人権を守る職場づくりに積極的に関与し、職場全体の意識向上を図ることが求められています。

問合せ先

保健事業チーム TEL:052-880-6201 E-mail:jigyou@chudenkenpo.or.jp