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2023年11月15日
【すこやか健保☆定期便のご案内】冷え症改善のセルフケア(11月号)

冷え症改善のセルフケア

外気温の高低にかかわらず、手足が一年中冷たいと感じる方。それは冷え症の可能性があります。冷え症は「気のせい」ではなく、自律神経の不調が原因かもしれません。放っておくと、体中のさまざまな不調につながります。

横浜市立大学の中村幸代先生に聞いた最新の知見をもとに、冷え症改善のための具体的なアドバイスについてお伝えします。

冷え症とは何か

冷え症とは、「中枢温と末梢温の温度較差がみられ、暖かい環境下でも末梢体温の回復が遅い病態であり、多くの場合冷えの自覚を有している状態」のことを指します。つまり、体の中心部は温かいのに、手足が冷たい状態が続き、手足の温度がなかなか上がらない状態のことをいいます。多くの人は、自分の手足が冷えていることを自覚しています。これは「性質」ではなく「症状」だと考えるため、「冷え症」とします。

具体的には、冷え症は、何らかの原因で自律神経がうまく機能しなくなり、血液の循環が悪くなって、手足の先まで血液が十分に行き届いていない状態だといえます。

自律神経とは、体の機能を自動的に制御する神経系で、主に交感神経と副交感神経の2つの部分から成り立っています。交感神経は、心拍数を上げたり血管を収縮させたりするアクセルのような役割を果たします。一方、副交感神経は、心拍数を下げたり血管を拡張させたりするブレーキの役割を果たしています。特に自律神経は、女性ホルモンの分泌をコントロールする神経とも密接な関係にあります。このため、思春期・妊娠出産期・更年期などに自律神経のバランスが崩れ、冷え症になる女性が多いのです。ただ自律神経の不調はストレスも影響するため、男性でも冷え症になる方はいます。

冷え症の簡単なチェック方法をご紹介します。①おでこに手のひらを5秒間あて、②その手をもう片方の手、または足の裏にあてます。あてた箇所が冷たいと感じたら、冷え症かもしれません。

冷え症が引き起こす不調

冷え症を放置すると、手足の冷たさや倦怠(けんたい)感だけでなく、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。血流が悪くなると、体全体の循環が悪くなり、免疫力が低下し、臓器の働きも低下。頭痛や肩凝り、動脈硬化や脳梗塞のリスクも高まります。

特に下半身の冷えは、腸の働きを悪くし、便秘や下痢、生理不順を引き起こす原因になります。また、冷え症は次のような症状や疾病にも影響を及ぼす可能性があります。疲れ目、目まい、動悸(どうき)、脱毛、薄毛、鼻炎、腰痛、骨粗鬆(しょう)症、肥満、抑うつ感、アトピー性皮膚炎、貧血、月経困難症、不妊症、妊娠・出産時の異常など。

これらの問題を避けるためには、普段から冷え症の改善に努めることが大切です。規則正しい生活や、体を冷やさない工夫などの積み重ねで、徐々に改善していくと考えます。それでもつらい場合は、冷え症外来を掲げるクリニックなどに相談してもいいでしょう。

日常生活に取り入れたい冷え症のセルフケア

冷え症の改善に最も効果がある生活習慣は、入浴です。39℃ぐらいのぬるめのお湯に長く浸かることで副交感神経が優位になり、血液の循環がよくなります。過度なストレスを受け続けると交感神経ばかり働いてしまうので、自分に合ったストレス解消法を見つけて副交感神経を働かせるようにしましょう。また、首や手首、足首といった体の「首」と呼ばれるところを冷やさないようにすること。洋服は、体を締めつけるものではなく、吸湿性に優れた素材のゆったりとしたデザインのものを身につけるとよいでしょう。

食事は、体を温める食材を選ぶだけでなく、体を冷やす食材を避けるように心がけましょう。冷たい飲みものや白砂糖、食品添加物、夏野菜などは体を冷やすといわれています。

以前、主に妊婦さんの冷え症対策として考えた、レッグウォーマー&ツボ押し&エクササイズの「冷え症改善パック」があります。このパックを4週間続けることで体温の上昇が見られました。レッグウォーマーとツボ押しを一緒に行うことでより高い効果を得られますが、誰でも簡単にできるのはエクササイズです。

肩幅くらいに足を広げて立ち、かかとを上げ下げするストレッチや、足の指でグー、チョキ、パーのじゃんけんをするエクササイズなど、全部で8種類の「冷えとりエクササイズ」を紹介しています(詳細は左の二次元コードからご確認ください)。

ぜひ日常生活に取り入れて、冷え症の予防や改善に役立ててください。

監修:中村 幸代先生

横浜市立大学教授

日本冷え症看護/助産研究会代表

Column

妊婦の冷えに注意!

妊娠中の女性にとって、冷え症は大敵です。なぜなら、冷えは腰痛や便秘などのマイナートラブルだけでなく、出産時のさまざまな異常の原因となるからです。お産後の女性2810名を対象に調査したところ、妊娠中に冷え症であった女性は、冷え症ではない女性に比べて出産時の異常を起こしやすいことが明らかになりました。

具体的には、早産になる割合が約3.4倍、前期破水(陣痛が始まる前の破水)が起こる割合が約1.7倍、微弱陣痛(陣痛が出産途中から弱くなる)が起こる割合が約2.0倍、遷延分娩(出産が長引く)が起こる割合が約2.3倍でした。

この結果から、妊娠後期に冷え症の女性は、冷え症ではない女性と比較して早産や前期破水、微弱陣痛、遷延分娩になりやすいことが分かります。これらのリスクを避けるためには、妊娠中の女性は体温管理をしっかりと行い、必要であれば医師のアドバイスを求めることが重要です。健康的な妊娠生活を送るためにも、冷え対策を心掛けましょう。

健康マメ知識

体温上昇効果が期待できる「ショウガ」

体を温める食材として知られているものにショウガがあります。ショウガは古くから世界各地で食されており、漢方の材料としても利用され、体温を上昇させる効果のあることが報告されています。その理由は、ショウガに含まれる成分にあります。ショウガの辛味成分であるジンゲロールには、血管を拡張し、血流を促進する働きがあります。これにより、体の深部の熱を体表に運び、体の末端部分を温めることができます。

また、ショウガを加熱すると、ジンゲロールはショウガオールに変わります。ショウガオールは胃腸の粘膜を刺激し、血流を高める作用があるため、体を芯から温めるとされていています。

これらの成分の働きで、ショウガは、生で食べても、加熱して食べても、冷え症の症状を和らげることが期待できます。

問い合わせ先

保健事業チーム TEL:052-880-6201 E-mail:jigyou@chudenkenpo.or.jp