「国民生活基礎調査」結果からみたわが国の社会の現状と課題
厚生労働省はこのほど「2022年国民生活基礎調査」の結果を公表しました。それによると、少子高齢化や社会環境の変化に伴い、単独世帯や高齢者世帯は数、割合ともに過去最高に。一方、児童のいる世帯は初めて1千万世帯を割り数、割合とも過去最少になったことが明らかになりました。健康の状況では、がん検診の受診率はおおむね40~50%前後の横ばい傾向にあることが気がかりです。
今後、現役世代の健康の維持・増進はもちろんのこと、人生100年時代における健康寿命の延伸などに努めている健康保険組合が担う役割はますます重要なものとなってきています。
同調査は、国民生活の基礎的事項を調査し、行政の企画、立案に必要な基礎資料とすることを目的に1986年から3年ごとに行われているものです。また、その間は簡易な調査を毎年実施しています。
児童のいる世帯、初めて1千万を割る
2022年6月2日現在の世帯総数は5431万世帯、平均世帯人員は2・25人でした。世帯構造では「単独世帯」が1785万世帯(全世帯の32・9%)で最も多く、世帯数、割合とも過去最高に。世帯類型でみると、「高齢者世帯」(65歳以上の者のみか、65歳以上と18歳未満の未婚の者で構成)が1693万1千世帯(同31・7%)で01年の14・6%から2倍以上増えています。その内訳は、単独世帯が51・5%と半数を超え、女性が33・0%、男性が18・5%でした。一方、児童のいる世帯は991万7千世帯(全世帯の18・3%)で初めて1千万世帯を割り込み、世帯数、割合ともに過去最少でした。歯止めがかからない少子高齢化の進展や地方から大都市への人口の移動と地方の過疎化、未婚者の増加などが、世帯の状況に影響してきたものと考えられます。
がん検診受診率の伸び率低迷が気がかり
傷病で通院している者(通院者)は人口千人当たり417・3(通院者率)となり、前回調査(19年)時より13・3ポイント増加しています。性別では男性401・9、女性431・6でした。年齢階級別にみると「9歳以下」が131・3で最も低く、年齢階級が高くなると増え、80歳以上では727・6となっています。疾病別にみると、男女とも「高血圧症」が最も多く、次いで男性は「糖尿病」、「脂質異常症」の順、女性では「脂質異常症」、「目の病気」の順でした。
過去1年間に「胃がん」「肺がん」「大腸がん」の各検診を受けた者の割合を性別にみると、男女とも「肺がん検診」が最も高く、男性53・2%、女性46・4%。過去2年間では「胃がん検診」を受診した割合は男性53・7%、女性43・5%となっており、「子宮がん(子宮頸がん)検診」は43・6%、「乳がん検診」は47・4%でした。いずれのがん検診においても、受診した者の割合はおおむね横ばいとなっているのが気がかりです。
ますます重要となる健保組合の役割
当面、少子高齢化が進む中、高齢化に伴う疾病は増加し、介護者を抱える家庭も増えていきます。これからは保険者や医療機関等の関係者が連携して国民の健康維持・増進や健康寿命の延伸に取り組むことを通じて医療保険制度や介護保険制度の給付サービスを一定の水準に保ちつつ、国民の理解を得ながら、いかに医療保険、介護保険の両制度を維持していくのかがより重要性を増してきます。
健保連・健保組合は毎年10月を「健康強調月間」と定め、加入者の健康の維持・増進に努めていますが、これらの活動は単に現役世代だけでなく、将来に向けた安心・安全の確保と医療保険制度の維持につなげていく重要な活動の一環です。今年も「こころとからだに4つのピース」と銘打ったポスターを作成し、健保組合や事業所に配布しました。皆さんも関心を持ってもらえればと思います。どのピースが欠けても健康な生活は危うい
Column
年々増加する老々介護
老々介護の実態では、「要介護者等」と「同居の主な介護者」について、年齢の組み合わせをみると、「60歳以上同士」は77.1%、「65歳以上同士」は63.5%、「75歳以上同士」は35.7%ですが、年次推移でみると、2001年調査時の各4.4%、40.6%、18.7%からいずれも上昇傾向が続いています。同居の主な介護者についてみると、介護時間が「ほとんど終日」である者は、「男性」が25.5%、「女性」が74.5%と女性への負担が圧倒的に大きく、続柄別では、女性の「配偶者」が45.7%と半数近く、次いで女性の「子」の18.5%、男性の「配偶者」の15.7%の順となっています。
「介護の社会化」を目的とした介護保険制度が創設されて20年以上がたち、当初より制度に対する理解が進んでいます。デイサービスや訪問介護サービスの仕組みを理解し、適切な利用を検討するのもよいかもしれません。
健康マメ知識
若い世代ほど喫煙が減少
国民生活基礎調査では喫煙についても調査をしています。男女別、年齢階級別に比較すると、「喫煙している者(毎日吸っている、時々吸う日があると回答した者の合計)」は、2001年調査では男性で48.4%、女性で14.0%でしたが、22年の調査では、男性25.4%、女性7.7%に減少しています。「喫煙している者」はほとんどの年齢階級で低下していますが、特に男女とも20~30代の若い世代での減少率が大きく、01年と比較すると男性では20代が55.6%→21.7%、30代が58.0%→29.9%に、女性では20代が22.7%→5.9%、30代が19.8%→9.0%へと大きく減少しました。
喫煙は百害あって一利なしといわれ、がんの発症因子や心臓病など生活習慣病の発症・悪化への大きな要因となっており、この傾向は望ましいといってよいでしょう。
問い合わせ先
保健事業チーム TEL:052-880-6201 E-mail:jigyou@chudenkenpo.or.jp