お知らせ
2023年08月15日
【すこやか健保☆定期便のご案内】増加する男性特有の前立腺の病気。 50歳を過ぎたら定期的な検査を!(8月号)

増加する男性特有の前立腺の病気。50歳を過ぎたら定期的な検査を!

前立腺は男性だけにある生殖器官で、生殖だけでなく、排尿にも大きな関わりを持っています。これまで前立腺の病気は高齢者が中心と思われていましたが、最近は40代、50代の働き盛りの人たちにも前立腺肥大症や前立腺がんなどが増加する傾向がみられます。

最新治療の普及や後進の指導に尽力する東京慈恵会医科大学附属病院泌尿器科の木村高弘先生にお話を伺いました。

40代、50代での発症例が増加

前立腺は精液の主成分である前立腺液を生成する、男性の生殖活動に欠かせない臓器です。膀胱(ぼうこう)のすぐ下にあり、クルミや栗の実ぐらいと表現される大きさで、中央に尿道が通っています。前立腺の病気で近年増えているのが、前立腺肥大症と前立腺がんです。前立腺がんは前立腺肥大症が進行したものと思っている人がいますが、それぞれ別の病気です。

これまでは高齢者中心の病気でしたが、最近は40代、50代でも発症するケースが増えています。生活スタイル、主に食生活の変化、また前立腺がんの検査の一つであるPSA検査数の増加も関係していると思われます。PSAとは前立腺特異抗原(Prostate Specific Antigen)のことで、前立腺で作られるタンパク質です。主に前立腺がんの腫瘍マーカーとして使われますが、肥大症や前立腺炎でも数値が上昇するため異常を見つけるには重要な検査です。

QOLの低下につながる前立腺肥大症

前立腺肥大症は、前立腺が肥大し尿道を圧迫するために尿が出にくくなる排尿障害や、尿を膀胱にためておけなくなる蓄尿障害を引き起こします。頻繁にトイレに行く、尿意があるのに出にくい、尿の勢いが低下し残尿感があるなどの尿トラブルを引き起こし、QOL(生活の質)を低下させます。明確な発症原因は不明ですが、加齢とそれによるホルモンバランスの変化、またわが国より欧米での発症率が高いことから、肉食中心の食生活にも原因があると考えられています。

まずは前立腺や尿道の緊張を抑えるα1遮断薬、男性ホルモンに影響を与える5α還元酵素阻害薬など、薬を使った治療で症状の緩和を目指します。薬で効果が出ない場合は手術が検討されます。尿道から内視鏡を入れ、電気メスやレーザーで肥大した前立腺を切り取る手術です。当附属病院では「ウロリフト」という細い糸で前立腺を縛り小さくして、圧迫されて細くなっていた尿道を広げる負担の少ない低侵襲な最新の治療も行っています。

前立腺がんは今や「治る」病気に

前立腺がんはがんの中でも、比較的進行が緩やかで予後の良いがんです。治療法も多岐にわたるため、症状や患者さんの希望に合わせて治療法を選択できます。進行度によって「低・中間・高」にリスク分けがされ、低リスクの場合には定期的に検査を行い経過観察する「監視療法」を行うこともあります。積極的な治療では、主に手術と放射線療法が行われます。

手術は前立腺全摘除術が基本になります。以前は開腹や腹腔鏡下で行われていましたが、現在はロボット支援手術が主流です。支援ロボットを使った手術には、傷が小さく、出血が少なく、合併症も抑えられるというメリットがあります。

放射線療法では従来通り体外から放射線を照射するIMRT(強度変調放射線治療)や重粒子線など外照射療法と、体内から治療を行う小線源療法があります。小線源療法では前立腺に放射線を発生するシード線源を埋め込み、内部から治療します。周辺組織への影響が少なく、合併症も起こりにくい治療法です。男性ホルモンを抑えるホルモン療法が組み合わされることもあります。

かつて前立腺がんは初期症状が表れにくく、進行してから発見されるケースが多く治りにくいがんでしたが、現在は採血だけで異常を発見できるPSA検査があります。進行が比較的緩やかで、治療法も多岐にわたる前立腺の病気は、早期発見できれば治るといえます。

ただ前立腺の病気を高齢者の病気と考えてはいけません。50歳を過ぎたら定期的にPSA検査を受け、日常生活で異常や変化を感じたら泌尿器科を受診しましょう。面倒だから、恥ずかしいから、歳だから仕方ないなどと思わず、泌尿器科の医師に相談することが、QOLを低下させない生活を続けることにつながります。

 

監修:木村高弘先生

東京慈恵会医科大学附属病院泌尿器科 教授、診療部長

Column

最新の治療が行われる前立腺の病気

木村先生の東京慈恵会医科大学附属病院では、前立腺肥大症には従来の薬物治療や内視鏡切除術に加えて、ウロリフト(経尿道的前立腺吊り上げ術)という切除をしない手術も行われています。前立腺がんでは、支援ロボット「ダビンチ」によるロボット支援手術、放射線では小線源治療が増加しています。どれも体へのダメージを抑えた、患者にやさしい治療です。

このように治療法は目覚ましく進化する一方で「60歳を超えると9割の人が前立腺に何かしらの異常を感じているが、治療を行う人は1割に過ぎない」というデータもあり、なかなか受診につながらない現実があります。

羞恥心や年齢に対する諦め、治療への恐怖心が壁になっているようです。悩む前に、専門医に相談しましょう。考えているよりずっと負担の少ない治療法が見つかるはずです。

健康マメ知識

SDMの大切さ

SDM(Shared decision making)は、治療法を決定するプロセスのことで“医師と患者が情報を共有し、話し合って治療方針を決める”という、近年広がりつつある考え方です。従来のように医師が治療に関する全てを決めるのではなく、患者と医師が共通の目標に向けて、意思決定を共有することを目指します。

近年はメディアやインターネットなど多くのツールで医療情報が拡散されています。情報量の増加や多様化の中で、医師に全てを委ねるのではなく、患者自身も情報を収集し選別、活用することが求められているのです。医師側のSDMに対する理解の浸透、意思決定に消極的な患者へのサポートなど課題はありますが、今後の医療を充実させるためにも、SDMへの取り組みは欠かせないものになっています。

提供元:健康保険組合連合会(すこやか健保2023年8月号) **禁無断転載**

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