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2023年07月18日
【すこやか健保☆定期便のご案内】夏本番の前にやっておこう! 熱中症対策(7月号)

夏本番の前にやっておこう!熱中症対策

 

2021年に環境省・気象庁が発表した「梅雨明けの時期から盛夏期にかけての熱中症予防対策」によれば梅雨明け後、熱中症警戒アラートが連日発表された際に、熱中症による死亡者数が急激に増加しているとのこと。

本格的な夏が来る前に、適切な熱中症予防対策について、熱中症のメカニズムに詳しい帝京大学医学部附属病院高度救命救急センターの三宅康史センター長に伺いました。

熱中症とは

熱中症とは、気温と湿度の高い環境にいた人が、暑さと脱水のために体調不良を起こす病態のことをいいます。気温の高い状況下で、人間が体温を平熱に保つために汗をかき、体内の水分や塩分が減り、血液の流れが滞るなどして、体温が上昇し、重要な臓器が高温にさらされることで発症します。気温の高い状況下での体調不良は、全て熱中症の可能性があります。対処が遅れると命にかかわる恐れもありますが、適切な予防法を知って対策を取っていれば、防ぐことのできるものでもあります。

まず、熱中症になるタイプは、大きく2つに分けられます。1つはスポーツや労働など、屋外で体を動かしている人が数時間以内で急激発症する「労作性熱中症」で、主に若年から中年に多くみられるタイプです。もう1つは、暑さを原因として次第に体力を落とし、数日以上かかって徐々に悪化する傾向にある「非労作性熱中症」で、主に高齢者や持病のある人に多くみられるタイプです。消防庁のデータによれば、2018年~22年の熱中症による救急搬送者数の54・5%が65 歳以上の高齢者でした。次いで18~65歳未満の成人が33・9%、7~18歳未満の少年が10・8%、生後28日〜7歳未満の乳幼児は0・8%です。発生場所は住居が最も多く39・5%。次いで道路16・6%、屋外11・8%、仕事場11・4%となっています。

熱中症で救急搬送される人数は、毎年6月~9月が桁違いに多く、年間を通してみてもこの4カ月に集中しています。つまり、最も熱中症になりやすい人は、夏に家にいる高齢者だともいえます。

 

 

熱中症かな、と思ったら

体温調節機能が低下している高齢者や、まだ十分に発達していない乳幼児は、成人よりも熱中症のリスクが高く、周囲による注意や見守りが必要です。気温が高い、湿度が高い、風が弱い、日差しが強い、照り返しが強い、急に暑くなったなどの環境下で、立ちくらみ、こむら返り、頭痛、目まい、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、高い体温、乾いた皮膚、けいれん、意識障害などの症状があれば、熱中症を疑います。

熱中症はⅠ度(現場での応急処置で対応できる軽症)、Ⅱ度(病院への搬送を必要とする中等症)、Ⅲ度(入院して集中治療の必要性のある重症)に分類されます。中等症以上の場合は、医療機関の受診が必要です。

現場でまずすべきことは、呼び掛けです。呼び掛けに応じなければ救急車を呼びます。救急車を待つ間、また呼び掛けに応じた場合も、風通しのよい日陰やクーラーが効いている室内等に移動させ、体を冷やします。意識がある場合は、冷たい水を自分で飲めるかどうか確かめます。自分で飲むことができれば軽症と判断できますが、20~30分程度はその場で見守り、体調の回復を見届けます。水が飲めない、しばらく待っても体調が回復しない場合は、速やかに医療機関を受診してください。

熱中症の予防と対策

熱中症は命にかかわる病気ですが、予防法を知り対策をしていれば防ぐことができます。日常生活における予防の基本は、脱水と体温の上昇を抑えること。つまり、暑さを避けることが大切です。特に猛暑日などは外出を控える、薄着になる、ゆったりした服を着る、帽子や日傘を使う、水浴びをする、冷房を使う、こまめに水分を補給するなど、衣食住全ての面で対策を行いましょう。

人間の体は、しだいに暑さに慣れて、暑さに強くなります。暑さに強くなると、体温上昇や心拍数増加などの生理的ストレスを軽減できます。日頃からウオーキング等で汗をかく習慣を身に付けておけば、夏の暑さにも強くなり、熱中症にもかかりにくくなります。ただしこれは、暑くなる前に準備しておくこと。暑くなってから慣れない運動を始めることはやめておきましょう。もちろん、炎天下での運動は避けます。屋外プールで水泳の練習中にも熱中症を発症することがあります。水の中のスポーツであっても、水分補給は必ず行いましょう。

気温や湿度を確認して日中の環境や行動に気を付けるだけでなく、夜間の睡眠環境を整えて、しっかり眠ることも大切です。夜間、特に暑いと感じなくても、猛暑日や熱帯夜には適切にエアコンを使用するようにしましょう。

監修:三宅 康史先生

帝京大学医学部附属病院

高度救命救急センター センター長

Column

「暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)」とは

熱中症予防を目的として、1954年にアメリカで提案された「暑さ指数(WBGT)」という指標があります。人間の熱バランスに影響の大きい「気温」「湿度」「輻射(ふくしゃ)熱(照り返しによる暑さの強さ)」の3つから算出し、指数が28を超えると熱中症患者が著しく増加する傾向にあり、33を超えると熱中症警戒アラートが発表されます。

環境省の熱中症予防情報サイト内で、地域ごとにその日の暑さ指数を確認できますので、こまめに確認しておくと事前の暑さ対策に役立てることができます。ただしこの値は、気象庁が、露場(ろじょう)と呼ばれる芝生上で観測したデータであるため、より生活に近い場面での参考値を知りたい場合は、同サイトで、「地方」「都道府県」「地点」を選択すると、環境省が独自に算出した「生活の場における暑さ指数」(参考値)を見ることができます。

健康マメ知識

熱中症対策にクーリングシェルターを利用しよう

熱中症対策を強化する改正法が成立し、熱中症警戒アラートが熱中症警戒情報として法的に位置付けられました。2024年夏の運用開始を目指しています。

熱中症警戒アラートは既に環境省と気象庁が運用しているもので、熱中症の危険性が極めて高い日の前日または当日に発表してきました。この熱中症警戒アラートに加え、さらに気温が上がって深刻な健康被害が予想される場合に、一段上の熱中症特別警戒アラートが新たに発表されることになります。

また、熱中症特別警戒アラートが発表された場合に、事前に指定した冷房の効いた公民館や図書館、ショッピングセンターなどを「クーリングシェルター」として開放することが自治体に義務付けられました。既に先行して設置している自治体もありますが、施設の数は今後も増えることが予想されます。

提供元:健康保険組合連合会(すこやか健保2023年7月号) **禁無断転載**

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