お知らせ
2023年06月15日
【すこやか健保☆定期便のご案内】あなどれない「歯周病」歯を失うだけでなく健康にも多大な悪影響をもたらします!(6月号)

あなどれない「歯周病」歯を失うだけでなく健康にも多大な悪影響をもたらします!

歯周病は虫歯とともに、歯を失う原因となる2大疾患です。

そのためには歯周病対策は欠かせず、歯の定期検診も重要、と聞くけど……。

痛みはなく大きな異常も感じないのに本当に必要なのでしょうか。

最近の研究で、歯周病は糖尿病や高血圧症などの生活習慣病、心疾患、肺炎などの一因となり、全身に悪影響を与えることが分かってきました。

日本歯周病学会歯周病専門医・指導医として、治療と後進の指導に取り組む昭和大学歯科病院歯周病科の山本松男先生に話を伺いました。

成人の約7割が罹患(りかん)している?!

歯周病とは、歯の生え際である歯と歯ぐきの隙間に歯垢(しこう)(プラーク)がたまって歯肉が炎症を起こす〝歯肉炎〟と、さらに歯を支える骨(歯槽骨(しそうこつ))にまで炎症が広がった〝歯周炎〟の総称です。

歯周病の初期には自覚症状がないことが多く、気付いたときには病状が進行し中高年で歯を失うケースが少なくありません。「歯周病チェックリスト」で、一つでも当てはまれば歯周病の可能性があります。わが国の成人の約7割が罹患しているといわれる歯周病は、誰もが注意すべき病気です。

毎日のブラッシングで磨き残しがあると、歯肉が炎症で腫れて隙間が深くなり歯周ポケットができ、ますますプラークがたまりやすくなります。プラーク1mgの中には約1億個以上の細菌が含まれ、この細菌が歯肉に炎症を起こし、歯ぐきが腫れます。放置すると歯槽骨にも影響が及び歯がぐらつき、歯を失うことにつながります。プラークにミネラル分が沈着して石のようになったものが歯石ですが、歯石があるとプラークがたまりやすくなります。

歯が無くなったり、歯痛やぐらつきなどで十分にかめなくなると、消化不良を起こし胃に負担がかかったり、食欲が低下してストレスを感じたりします。〝自分の歯でかむ〟ことは消化吸収を助けるだけでなく、味覚、嗅覚、触覚などの感覚にさまざまな刺激を与えます。心身ともに健康で生きるためにとても大切です。

最近の研究で、歯周病は全身の病気と密接な関係があることが分かってきました。特に糖尿病では、網膜症や腎症、神経障害などの合併症と並び、2022年糖尿病治療ガイドラインでは、密接な関わりのある併存病の1つに歯周病が挙げられています。歯周組織から入った歯周病原因菌やその成分、またそれに対応して体がつくる炎症成分が全身に広がることで、動脈硬化による心疾患や脳血管障害、肺炎などの呼吸器疾患、早産・低体重児出産などを悪化させることが多く報告されています。

日々のオーラルケアが何よりも重要

近年、歯科治療の進歩にはめざましいものがありますが、最も重要なのは〝日々のブラッシング〟と実感しています。予防だけではなく治療効果をグンとよくするのも毎日のオーラルケアの上達とその習慣です。つまり口内の歯周病原因菌を減らすことが症状改善の大前提なのです。さまざまなタイプの歯ブラシ、歯磨き剤、フロスなどがありますが、歯並びやかみ合わせなど口腔(こうくう)内の状態や生活習慣は個人差が大きく、道具だけでは解決できません。一度お使いのブラッシング用具を持参し、歯科スタッフにアドバイスをしてもらってはいかがでしょうか。こうした申し出は好意的に受け止められるだけでなく、大変効果があります。

歯周病治療について説明をします。治療前に、歯周ポケットの深さを調べるプロービング検査、歯槽骨の状態を調べるエックス線検査、プラークの付着状態を調べる検査などを行い、検査結果に基づいて、歯周病の進行や重症化を抑える治療を行います。

基本治療は、効率的なブラッシング方法やその習慣化のための指導と、プラークや歯石の除去です。通常はこれで歯ぐきが引き締まり、歯周ポケットが改善します。しかし歯周ポケットの状態が深く十分に改善されない場合は、歯肉を切開して歯周ポケットの奥深くに溜まったプラークや歯石を除去するフラップ手術や歯周組織再生療法などの外科的処置を行うこともあります。

毎日のブラッシングでプラークをきちんと取る、これを習慣化することが何より大切です。ただ「磨き残しは悪者」と思い、ストレスになるほどピカピカに磨く必要はありません。まずは関心を持ち、少しでも上手になるよう一歩踏み出してください。異常を感じたらすぐに受診し、できれば定期的に歯科医のメンテナンスを受けましょう。

監修:山本 松男先生

昭和大学歯科病院教授、歯周病科診療科長

日本歯周病学会歯周病専門医・指導医

Column

失った歯周組織の再生治療とは

これまでは、歯肉や歯槽骨など歯周組織の破壊が進んでしまった重度歯周病の治療は再生は難しく、抜歯するしかないケースが多くありました。しかし近年、歯周組織再生誘導法(GTR法)、歯周組織再生薬や再生材料を使った歯周組織再生療法などが行われ、一部では再生が期待できるようになりました。

歯肉を切開して深くに残った歯石や炎症が起きている歯肉を取り除き、その部分に歯周組織再生薬や再生材料を用いた後、縫合します。歯周組織再生療法にはリグロス、エムドゲインなどを用いる方法や、GTR法などがあります。

ただ適応症を見極めるための事前検査が重要です。治療費もリグロスとGTR法は保険適用ですが、保険適用外の材料があったり、組み合わせると保険適用でなくなったりするケースもありますので、事前に担当医とよく相談する必要があります。

健康マメ知識

歯ブラシヘッドが小さいのは日本だけ?!

欧米旅行で買った歯ブラシのヘッドが驚くほど大きかった、そんな経験はありませんか。日本の歯ブラシは歯の隅々まで磨けるようにと、コンパクトヘッドが主流です。

では欧米の人は、口腔(こうくう)ケアに関心が薄くきちんと磨けなくても問題ないと思っているのでしょうか。いいえ、実は欧米の口腔ケアに関する意識はとても高いのです。歯磨きも歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロス、プラークの有無が分かる染め出し液、フッ素入りの歯磨き剤や洗口液など、複数の口腔ケアグッズを使うのが当たり前になっているのです。

歯ぐきが下がりはじめるとコンパクトヘッドではカバーしきれない場合もあります。その人に合った道具を歯科スタッフに選んでもらい、丁寧な口腔ケアを継続することがとても大切です。

提供元:健康保険組合連合会(すこやか健保2023年6月号) **禁無断転載**

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