“なんとなくだるい”を解消する自律神経の整え方
なんとなく続く不調は、自律神経の乱れが原因かもしれません。
頭痛、肩こり、便秘、不眠、冷え、倦怠感(けんたいかん)、イライラ、不安感など、
病院に行くほどではないけれど、毎日なんとなくだるい――。
そんな“なんとなく不調”に悩む人が、ストレス過多な現代社会で少しでも心地よく暮らせるように、自律神経の基礎知識、不調への対処法などを、順天堂大学医学部の小林弘幸先生にお聞きしました。
自律神経は体と心のバランスを保つ司令塔
自律神経とは、生命を維持するための自動制御装置のようなもので、自分の意思とは無関係に、体のさまざまな働きをコントロールしてくれている神経のことです。例えば、心臓の拍動や呼吸、消化、体温の調節など、私たちが無意識に行っている生命活動の全てに関わっています。
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つからなります。交感神経は主に日中、活動しているときに優位になり、心拍数を上げたり血圧を高めたりして、体を活動モードに導きます。一方、副交感神経は夜間やリラックス時に優位になり、体を休ませ、回復させるリラックスモードの役割を担っています。
この2つはいわばアクセルとブレーキのようなもので、バランスよく働くことで、私たちは健康な毎日を送ることができるのです。しかし、ストレスや寝不足、食生活の乱れが続くと、交感神経が過剰に働き、血流が悪化。肩こりや頭痛、冷えや胃腸の不調などが現れやすくなります。さらに、集中力の低下や不安感、イライラも生じやすくなり、生活の質そのものが下がってしまいます。また、免疫力が落ち、風邪をひきやすくなる、疲れが取れないなど、慢性的な不調が続くと、自律神経失調症と呼ばれる状態になることがあります。
こうした状態は放っておかず、規則正しい生活や適度な運動、リラクゼーションを取り入れるなど、生活習慣から整えていくことが大切です。
“なんとなく不調”から抜け出す自律神経を整えるヒント
自律神経は基本的にコントロールできませんが、唯一、意識的に働きかけることができるのが「呼吸」です。お勧めは、3〜4秒かけて息を吸い、6〜8秒かけて吐く「1:2の呼吸法」。緊張したときやイライラしたとき、眠る前などに取り入れると、心身のバランスを整えるのに効果的です。
また、1日1分から取り入れることができるエクササイズに、腕クロス・ストレッチがあります。まず足を肩幅に開いて立ち、両腕を上に伸ばして手首をクロスさせ、息を吸いながら伸びをします。手首はクロスさせたまま、息を吐きながら上半身を左に倒します。息を吸いながら体を中央へ戻し、息を吐きながら右に倒します。これを1回3セットくらい行うとよいでしょう。
規則正しい生活習慣で、自律神経を整える
自律神経のバランスを整えるためには、日々の生活習慣を見直すことが欠かせません。なかでも「運動」「睡眠」「食事」の3つは、自律神経を良好に保つための土台となる基本習慣です。
朝決まった時間に起きて太陽の光を浴び、深呼吸をしてコップ1杯の水を飲む。それだけでも体内時計が整い、心身がリズムを取り戻します。朝食は必ず取るようにします。夜はぬるめのお風呂にゆっくりつかり、布団に入る3時間前には食事を済ませ、1時間前にはスマホを手放しましょう。
生活リズムを整え、質の良い睡眠・適度な運動・腸に優しい食事を心がけ、ストレスをためない工夫をすることで自律神経は自ずと整っていきます。
監修:小林 弘幸 先生
順天堂大学医学部 教授
Column
腸は第二の脳! 自律神経を整える腸の力
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、自律神経と密接に関係しています。自律神経が乱れると腸の動きが鈍くなり、便秘や下痢などの不調が起こりやすくなります。
一方で、腸内環境が整うと自律神経のバランスも改善されることが分かっています。
腸内の善玉菌が作り出す短鎖(たん さ)脂肪酸は、腸のバリア機能を保ち、免疫やホルモンの働きにも影響を与えます。また、腸は脳と「腸脳相関」と呼ばれる情報ネットワークでつながっており、腸が整えば心も安定しやすくなります。
発酵食品や食物繊維を積極的に取ることで、腸内細菌のバランスが保たれ、自律神経も整いやすくなります。毎日の食生活が、自律神経の安定に大きく関わっているといえます。
健康マメ知識
「ガム」の咀嚼で自律神経が整う?!
ガムをかむことで、自律神経のバランスを整える効果があるとされています。
理由は、リズムよく咀嚼を繰り返すことで、心身を落ち着かせる副交感神経が優位になり、ストレスが和らぎやすくなるからです。
また、ある実験では、ガムをかんだ後の唾液中のストレスホルモンが低下し、脈拍も安定するという結果が出ています。
こうした変化は、緊張の緩和や集中力の向上につながると考えられています。
オフィスや移動中などで、気軽に取り入れられる方法としてお勧めです。
ただし、長時間かみ続けたり、強くかみ過ぎたりすると顎に負担がかかります。1回10〜15分を目安にするとよいでしょう。
提供元:健康保険組合連合会(すこやか健保2025年6月号) **禁無断転載**
すこやか健保は健康保険組合連合会ホームページより一部ご覧いただけます。関連リンクよりご覧ください。
問い合わせ先
保健事業チーム TEL:052-880-6201 E-mail:jigyou@chudenkenpo.or.jp