女性の健康づくり
女性のカラダは、妊娠や出産など男性に比べてカラダにかかる負担が大きいものです。昨今、乳がんや子宮がんの低年齢化が問題視されていますが、これらは早期発見すれば治療成績の良いがんと言われています。
女性のカラダに対する関心を深め、検診の重要性を理解したうえで、「乳がん検診」、「子宮がん検診」を定期的に受診することが大切です。
乳がん
乳がんが近年急増し、罹患数は日本女性のがん第1位になっています。現在、日本人女性の約20人に1人が罹る可能性があると言われていますが、乳がんは早期発見すれば9割は治る病気ですので、日ごろから自己チェックをしっかり行いましょう。
乳がんのできやすい部位
乳がんのできやすい場所は、左右ともに乳房の上・外側で約50%がこの箇所に発生します。次いで内側上方、外側下方、中心部・内側下方とつづきます。右乳房より左乳房に多くみられ、その比率は45:55ほどです。
乳がんになりやすい人
- 40歳以上
- 出産歴がないか、初産が30歳以上
- 肥満
- 初潮年齢が低い
- 閉経年齢が高い、子どもがいない・少ない
- 家族に乳がんになった人がいる
※ただし、上記に当てはまらなくても、かかる可能性はあります
乳がんのこんな症状に注意
- 乳房にいつもと違うしこりがある
- 乳房の皮膚がひきつれる
- 乳頭を中心として湿疹やただれがある
- 乳頭から血液や分泌物が出る
乳がんの検査方法
マンモグラフィ検査 | 乳房専用のX線検査。1センチ以下の小さなしこりも発見できます。超音波検査では見つかりにくい初期の石灰化(乳がんのサインである砂粒のような白い点)も映し出します。 |
超音波検査 | プロープ(探触子)を乳房の上で動かしながら、数ミリのしこりを見つけます。乳腺の発達している若い世代は、マンモグラフィでは全体が白っぽく映ってしまい、しこりが見えにくいので、超音波検査の方が適しています。 |
乳がんの自己検診
乳がんは自己検診によって早期発見が可能です。月経後1週間目、閉経後は毎月決まった日に自己チェックを行うようにしましょう。
鏡に向かって | あおむけに寝て |
---|---|
乳房にくぼみやふくらみがないか、乳首のあたりが陥没していないか、乳首の向きが左右で異ならないか、皮膚の赤味がないかをチェックする。 |
片手で、反対側の乳房の中心から周辺へ、軽く押して円を描きながら触れていく。手を上げたときと下げたときの両方を調べ、反対側の乳房も同じようにチェックする。 |
リンパ節のチェック | 乳房の分泌液のチェック |
あおむけに寝たまま、わきの下の奥に指先を差し入れるようにして、わきの下のリンパ節が腫れていないかどうかチェックする。 |
乳房の乳輪から乳頭に向けて、乳汁を絞るようにつまむ。分泌液に血液が混じる場合は、外科で早めに検査を受ける。 |
子宮がん
子宮がんのできるところ
子宮がんは、子宮頸がんと子宮体がんに分けられます。子宮頸がんは、子宮体がんとくらべると発症年齢が低く、罹患率が高いのは30歳代後半~50歳代ですが、最近は20歳代や30歳代前半での発症も増えています。
子宮がんになりやすい人
頸がんになりやすい人
- 20~50歳代
- セックスパートナーが多い
- 15歳以前にセックスを開始している
- 出産回数が多い
体がんになりやすい人
- 50~60歳代(若い人にもみられる)
- 不妊症
- 糖尿病や高血圧症
- 出産経験がないか、少ない
- 肥満
- 乳がんにかかったことのある人
※ただし、上記に当てはまらなくても、かかる可能性はあります
子宮がんの検査方法
子宮頸がん検診 |
子宮頸部細胞診があります。細胞診は、子宮頸部の表面を綿棒などで軽くこすって細胞をとります。痛みはありません。また、HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染しているかどうかを調べるHPV検査があります。細胞診とHPV検査を併用することで、精度の高い検査になります。 |
子宮体がん検診 | 体がんのリスクが高まる40歳代以降は、頸がんとともに、体がん検診も大切です。体がん検診では、子宮の奥までチューブを入れて細胞をとる細胞診をします。細胞診は、検査中から検査後にかけて痛みがあります。体がんは、初期に不正出血が起こることが多いので、不正出血を放置しておくことは禁物です。 |
卵巣がん検診 | 卵巣がんは腹部の圧迫感やしこり、頻尿などの症状があって受診すると、すでにがんが転移していることが少なくありません。しかし、卵巣にできる腫瘍(しゅよう)は良性であることもあります。定期的に検診を受ければ、卵巣のう腫、チョコレートのう腫などが見つかるかもしれません。子宮頸部細胞診と同時に、超音波検査をおすすめします。 |
子宮筋腫
子宮にできる良性の腫瘍で、成人女性の4人に1人いると言われている子宮筋腫。不妊や流産の原因になることもあります。35~50歳は筋腫年齢といわれ、ふっくらとした活動的な女性に多くみられます。最近は20歳代前半にも増えており、生活の欧米化が背景にあると考えられています。
筋腫ができる場所
筋腫は、できる場所によって名前や症状、治療法が異なります。最初は子宮の筋肉の中にできますが、成長するにつれて場所を移動するものと考えられています。
タイプ別にみた子宮筋腫
漿膜下筋腫
(しょうまくかきんしゅ) |
子宮の外側、子宮をおおう漿膜の下にでき、外に向かって成長します。症状がもっとも軽いタイプです。 |
粘膜下筋腫
(ねんまくかきんしゅ) |
子宮内膜という月経を起こす粘膜の下にでき、内膜に向かって成長。月経量が多くなり月経痛も起こします。 |
筋層内筋腫
(きんそうないきんしゅ) |
もっとも多いタイプです。筋腫が成長して大きくなると、過多月経や、時に不妊の原因になります。 |
筋腫分娩
(きんしゅぶんべん) |
粘膜下筋腫が子宮内腔に押し出され、さらに腟方向に押し出されたもので、大量出血をしばしば起こします。 |
子宮筋腫によるこんな症状
筋腫の多くは無症状で、婦人科検診などで見つかることが少なくありません。しかし、次のような症状がある場合は、子宮筋腫の可能性が考えられます。
月経過多による貧血・ 動悸・息切れ・めまい |
筋腫による月経過多は、レバーのような血のかたまりが出ることから気づきます。貧血になり、動悸・息切れ・めまいを感じます。 |
おりものの増加 | 水のようなさらさらしたおりものがふえます。 |
下腹部痛 | 筋腫にねじれや感染が起きると下腹部が痛みます。 |
圧迫症状による 頻尿・腰痛 |
腰椎が筋腫に圧迫され、頻尿・腰痛が起こります。 |
不妊 | 筋腫の場所によって、不妊・流産の原因になります。 |
子宮内膜症
子宮内膜症ができる場所
子宮内膜症が発生しやすい場所は骨盤に守られている下腹部の内部で、腹膜や臓器の表面、卵巣の内部、子宮の筋肉層、腹膜表面から少し内部などです。まれに肺やへそなどにも発生します。
症状の出方が違う子宮内膜症と子宮腺筋症
子宮内膜症は、病巣が子宮以外のところにできます。一方、病巣が子宮筋層内にできるのは子宮腺筋症です。この2つは、顕微鏡的には同じものですが、症状の違いから、別に扱ったほうがよいとされ、別々の呼称になっています。
子宮内膜症 | 子宮腺筋症 | |
---|---|---|
内膜が増殖 する場所 |
子宮以外 | 子宮の筋層内 |
発症しやすい年齢 | 20~30歳代 | 40~50歳代 |
おもな症状 | 月経痛、下腹部痛、腹痛、性交痛、便秘・下痢、排便痛、不妊、月経時の腸からの下血、月経時の胃吐血・肺からの喀血 | 月経痛・月経の量がふえる、貧血、下腹部の違和感・重い感じ・鈍痛 |
月経痛・骨盤痛・不妊が3大症状
月経痛 | 子宮内膜症の約70%にみられ、月経の回数を重ねるごとにひどくなっていきます。鎮痛薬が効かなかったり、激痛が生じます。 |
骨盤痛 | 月経とは無関係に下腹部や腰が痛みます。子宮後壁やダグラス窩周辺の子宮内膜が癒着して内膜症が進むと、性交痛がひどくなります。 |
不妊 | 内膜症と不妊症の因果関係は明らかではありませんが、内膜症の人の30~40%が不妊症であることから、密接な関係が考えられます。 |
子宮内膜症が増えている原因は?
晩婚化と少子化による月経回数の増加が原因の一つです。子宮内膜症は、月経のたびに悪化しやすいからです。
発症しやすいタイプはあるのか?
やせ型や神経質な人は発症しやすいといわれますが、子宮内膜症の人にこういうタイプが多いというだけで、根拠はありません。母親や姉妹に子宮内膜症があると、そうでない人に比べて8倍発症率が高いといわれ、遺伝的要素が考えられます。
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