健保からのお知らせ

2021/03/12

【すこやか健保☆定期便のご案内】40歳過ぎたら注意が必要!失明原因第1位の「緑内障」(3月号)

健康保険組合連合会の刊行誌「すこやか健保」より、みなさまに有用な情報を「すこやか健保☆定期便」として定期配信いたします。(毎月15日頃配信予定)

今回は、「40歳過ぎたら注意が必要!失明原因第1位の「緑内障」」です。

みなさまの健康リテラシーの向上にぜひお役立てください。

40歳過ぎたら注意が必要!失明原因第1位の「緑内障」

長年にわたり、日本人の中途失明原因のトップに挙がる「緑内障」。

40歳以上の人の約5%が発症するといわれている疾患です。

緑内障は自覚症状を感じにくいため早期発見が難しく、気が付いたときには進行しているケースが多いという特徴があります。

加えて発症原因が不明のため、根治が難しいとされています。

緑内障がご専門の北里大学医学部眼科学主任教授、庄司信行先生にお話を伺いました。

主な原因は、眼圧上昇による視神経の障害 

 眼球は直径24ミリほどの臓器です。私たち人間は、このとても小さな臓器からいろいろな情報を取り入れ、日々豊かで実り多い生活を送ることができています。ですから眼の病気を患うと、私たちのクオリティ・オブ・ライフ(QOL、「生活の質」)を大きく損ねることになってしまいます。特に40歳以上の方に注意していただきたい眼の病気が「緑内障」です。

 緑内障は、眼内の視神経に障害が起きることによって視野が狭くなり、見える範囲が徐々に欠けていく病気です。最悪の場合、失明することもあります。視神経に障害を与える主な原因と考えられているのが〝眼圧〟です。眼圧とは、眼球を球形に保つための眼内圧力のことで、眼球内を循環している〝房水〟(ぼうすい)という液体によって適度に保たれています。この房水の量が増えると眼圧が上がり、眼内に張り巡らされている視神経に障害を与えます。

 房水は毛様体で作られ、そのほとんどが瞳孔から前房へ流れ、隅角(ぐうかく)の線維柱帯(せんいちゅうたい)というフィルターを通してシュレム管から眼外へ排出されます。この排出がうまくできないと眼内に房水が滞り、眼圧が上昇します。排出がうまくいかない原因は大きく2つに分けられます。

眼圧が正常でも緑内障になる!?

 1つ目の原因は線維柱帯のフィルター機能が目詰まりすることです。このタイプの緑内障には、眼圧が正常値を超えている「原発開放隅角緑内障」と、正常値内にある「正常眼圧緑内障(NTG)」があります。もう1つの原因は隅角にある虹彩(こうさい)が線維柱帯を塞いでしまうことで、これを「原発閉塞隅角緑内障」と呼びます。ほかの病気が原因で起こる「続発緑内障」や、先天的に隅角に異常がある「先天緑内障」などもあります。

 私たち日本人にはフィルターが目詰まりする原発開放隅角緑内障が多く、なかでも眼圧が正常値内であるNTGが圧倒的に多いのです。では、なぜ眼圧が正常値なのに視神経が障害を受けるのでしょうか。これは視神経の眼圧に対する抵抗力には個人差があり、抵抗力が低い人は眼圧が正常値でもダメージを受けてしまうためと考えられています。

 人は両眼でものを見ているため、一方の視野が欠けていてももう一方の眼がそれを補います。さらに緑内障の場合には、視野が正面からではなく中心から少し離れたところが見づらくなることが多いので、見づらい範囲がある程度大きくなるまでは気付くことが難しいのです。そのため異常を感じたときには、進行してしまっているケースが多いのです。

治療目的は眼圧のコントロール

 残念ながら現時点では、緑内障によって欠けた視野を元に戻す治療法はありません。そのため進行を食い止め、できるだけ視野を失わないようにする治療が行われています。重要なのは〝眼圧をコントロールすること〟です。症状に合わせて「薬」「レーザー治療」「手術」などが行われます。

 「原発開放隅角緑内障」は、通常薬で眼圧を下げる治療を行います。房水の生成を抑えるタイプと房水の排出を促進させるタイプの点眼薬を使い分け、眼圧のコントロールを目指します。効果が表れない場合はレーザー治療や手術が検討されます。

「原発閉塞隅角緑内障」では、急激に症状が悪化する場合もあり、その場合はレーザー治療や手術が選択され、その後、薬での治療が行われます。実際は患者さん1人ひとりの状態や進行状況を詳しく調べて治療方法が決まります。

 根治治療法がない緑内障で、重要なのは〝早期発見と早期治療〟です。40歳を過ぎたら定期的に眼の検査を行いましょう。緑内障になっても、早期に発見し、適切な治療を行えば、日常生活に不便のない範囲の視野や視力を維持していくことが可能です。もし緑内障と診断されたら、「自覚症状がないから」と放置したり、「失明してしまうのでは」といたずらに恐れたりしないで、医師の指示に従いできるだけ早く治療を始めてください。

監修:庄司信行

医学博士

北里大学医学部 眼科学主任教授 

長期間の治療には担当医との信頼関係が不可欠

 根治治療法がない緑内障では、糖尿病や高血圧などと同様に、生涯治療を続けることになるケースがほとんどです。視野障害の進行速度には個人差があり、点眼薬など治療の効果にも個人差があります。効果が表れない場合には、別の薬を試したり、複数の点眼薬を同時に使用することもあります。ただ、薬の効果に関しては自覚症状から判断することは難しく、医療機関での検査が必要になります。

 緑内障と診断されたら、通院を欠かさず、処方された薬は用法や用量を守って使うことが大切です。また点眼薬などを使っていて「変だな」と感じたら、ためらわずに担当医に相談しましょう。こうした治療を長期間不安なく続けるためには、担当医との信頼関係が欠かせません。ちょっとした変化や違和感は、遠慮せずに必ず医師に相談してください。

知っておきたい!  健保のコト

その治療、保険がききますか?

 前月号で、接骨院の健康保険の適用について説明しましたが、今回は「はり(鍼)きゅう(灸)・マッサージ」の施術を受ける際の注意です。

 はりきゅう・マッサージの場合、健康保険の給付対象となるのは、医師が認めた場合に限られ、初めて施術を受ける場合は、医師の同意書または診断書が必要です。継続して受ける場合は、6カ月に1度、必ず受診し医師の再同意が必要になります。

 はりきゅうで健康保険(証)が使えるのは、神経痛・リウマチ・頸腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症・その他類症疾患に限られます。また、医療機関で同じ疾病の治療を受けている場合は、健康保険(証)は使えません。

 マッサージの場合は、筋まひ・関節拘縮(こうしゅく)の症状がある場合のみです。単に疲労回復やリラックスのためのマッサージは健康保険の対象外ですのでご注意ください。

 接骨院の柔道整復師による保険適用となる施術の場合は、「受領委任払い」で施術所の窓口で3割相当額を支払うと説明しましたが、はりきゅう・マッサージの場合、健保組合の約8割が「償還払い」を採っており、いったん窓口で全額を支払い、後で自己負担分を差し引いた額を健保組合から戻してもらうこととなります。これは、はりきゅう・マッサージの「受領委任払い」導入の歴史が浅く、2019年1月から始まり、受領委任払いへの参加が健保組合など各保険者の裁量となったことによるものです。

健康マメ知識

早期発見のため、定期的に検査を

 眼の病気はQOLに大きな影響を与えます。40歳を境に「緑内障」のリスクが高まるので定期的な検査が大切です。通常の視力検査のほかにも様々な検査があります。

 緑内障の診療に欠かせない「眼圧検査」は、眼の表面に空気を当てる方法と直接眼の表面に器具を当てる方法があります。眼圧は血圧と同様に、一日のなかでも変化があり個人差もあります。眼に光を当てて写真を撮り、視神経乳頭部の変化を見る「眼底検査」は、緑内障の早期発見や正常眼圧緑内障の診断に効果的です。「隅角検査」では、隅角の広さや異常を調べます。異常があれば、原発閉塞隅角緑内障であることが分かります。近年、普及した「OCT(光干渉断層計)検査」では、視神経や網膜の状態を調べることができます。また、見える範囲やどこまで暗い光を感じられるかを調べる「視野検査」も欠かせません。

 提供元:健康保険組合連合会(すこやか健保2021年3月号) **禁無断転載**

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保健事業チーム TEL:052-880-6201 E-mail:jigyou@chudenkenpo.or.jp