健保からのお知らせ

2021/05/14

【すこやか健保☆定期便のご案内】老いは舌から始まる 元気でいるために今日からできる口腔ケア(5月号)

健康保険組合連合会の刊行誌「すこやか健保」より、みなさまに有用な情報を「すこやか健保☆定期便」として定期配信いたします。(毎月15日頃配信予定)

今回は、「老いは舌から始まる 元気でいるために今日からできる口腔ケア!」です。

みなさまの健康リテラシーの向上にぜひお役立てください。

老いは舌から始まる

元気でいるために今日からできる口腔ケア

年を取っても健康な歯があればしっかり噛(か)めると思っている人は多いでしょう。

しかし、噛むという行為は、歯だけではできません。

食べて飲み込むためには、舌の働きが重要。

咀嚼(そしゃく)も嚥下(えんげ)も、しっかり動く舌があって初めてきちんと行えるのです。

楽しいおしゃべりや歌を歌う時にも、舌は重要な役割を果たしています。

好きなものを食べ、楽しいおしゃべりを続けるために、加齢と舌の関係、加齢度チェック、舌のケア方法について口腔リハビリテーションの第一人者、菊谷武先生にお話を伺いました。

歯が残っていても噛めなくなる

 「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」がスローガンの「8020(ハチマルニイマル)運動」 は、開始から30年を経て、8020達成者は50%を超えて増え続けています。しかし、多くの高齢者が自分の歯を残し、健康寿命を延伸しているのに対し、介護施設など高齢者の介護現場では、「歯があっても食べられない」という現実に直面しています。

 その原因は、口腔機能の低下にあります。食べ物を飲み込むまでのプロセス(イラスト参照)は、意外と複雑です。

 まず、①口の中に取り込み、味や温度など食べ物の物性などを認知します。②認知できたら、咀嚼の準備。舌や唇、頬、顎などを使って、上下の奥歯で食べ物を噛み砕きます。十分に咀嚼したら、食べ物を舌の上にまとめて飲み込む準備。③〜⑤舌を使って食べ物を喉に送り込んで、嚥下するのです。いかがですか。「食べる」という行為に舌が大きな役割を担っていることが分かるでしょう。

気づかぬうちに進行する舌の加齢

 食べるという行為は、歯だけではなく、舌をはじめとする口腔機能全体で成立しています。そして、加齢により、足腰が衰えるのと同様、口や舌の機能もゆっくりと低下していくのです。口や舌の機能が 低下すると、さまざまな誤作動を起こし、誤嚥(ごえん)やむせなどが起きます。表(口腔機能チェック)のようなことが増えてきたら、口や舌の老いが始まっている可能性があります。

 誤嚥とは、食べ物が誤って食道ではなく気管に入ってしまう状態です。むせは、気管から排出させるために起こります。頻繁に起こる場合は、舌や喉の機能が弱くなっている可能性があります。咀嚼中に舌や頬の内側を噛んでしまうのも、口腔機能の協調性が悪くなっている証拠です。これらの症状が増えてきたら、口腔機能の低下が始まっているサインです。

今日からできる舌の鍛え方

 加齢とともに身体機能および口腔機能が低下するのは仕方のないこと。しかし、意識して使い続けることで、機能低下を緩やかにすることは可能です。普段から全身をよく動かし、よく食べ、よくしゃべることを心掛けましょう。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、みんなで集まってご飯を食べたり、カラオケで歌ったりといった、いわば楽しく口腔機能の訓練をする機会が減っています。口や舌の機能を衰えさせないためにも、①ガムを噛む、②ひとりカラオケを楽しむ、③早口言葉を言う、④本や新聞を音読する、⑤口の中で舌を頬の内側に押し付けて円を描くなどを、日々の生活に取り入れてみてください。

 また、新型コロナウイルス感染の不安から歯科の受診率も下がっており、コロナ収束後に、口腔機能が低下した人が増えるのではないかとの危惧があります。健康を守る習慣はぜひ続けて、定期的な歯科受診も続けましょう。

監修:菊谷武

日本歯科大学教授、日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック院長

 

健康マメ知識 

保険適用でできる口腔機能低下症検査

「口腔機能低下症」とは、加齢、疾患、障害などさまざまな要因によって、口腔内の機能が少しずつ低下してくる疾患です。放置しておくと、咀嚼(そしゃく)障害、摂食嚥下(えんげ)障害などにつながる可能性がありますが、早期に自覚することで生涯にわたり、食べることや会話を楽しむことができます。検査項目は「口腔衛生状態」「口腔乾燥度」「咬合力(こうごうりょく)(噛(か)みしめる顎(あご)の力)」「舌口唇運動機能」「舌圧(舌の力)」「咀嚼機能」「嚥下機能」の7つ。3項目以上該当すると、口腔機能低下症と診断されます。歯科における口腔機能低下症検査の実施率は1割程度と低く、あまり知られていませんが、2018年4月から保険適用で受けられるようになっています。口腔機能に不安のある方は、かかりつけ医に相談してみましょう。

 

提供元:健康保険組合連合会(すこやか健保2021年5月号) **禁無断転載**

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