健保からのお知らせ
2021/11/25
【すこやか健保☆定期便のご案内】「危険な病気がひそむ 『食後高血糖』」(11月号)
健康保険組合連合会の刊行誌「すこやか健保」より、みなさまに有用な情報を「すこやか健保☆定期便」として定期配信いたします。(毎月15日頃配信予定)
今回は、「危険な病気がひそむ 「食後高血糖」!」です。
みなさまの健康リテラシーの向上にぜひお役立てください。
危険な病気がひそむ「食後高血糖」
食事をすると誰でも、糖の血中濃度(血糖値)が一時的に上がります。
健康な人なら通常、食後2時間もすれば血糖値は自然に下がりますが、この血糖値が高い値が続く状態になる人がいます。
この状態を「食後高血糖」といいます。
ほとんどの場合は自覚症状がないまま進行し、重大な合併症発症のリスクを上昇させることが分かっています。
何に気を付ければよいのか。
食後高血糖のリスクとケアについて糖尿病専門医の寺内康夫先生に伺いました。
食後に血糖値が急上昇する「食後高血糖」
食後高血糖は、糖尿病予備群の重要な指標の一つとして注目されています。糖尿病を確認するために血糖値を見るとき、一般的な健康診断では「空腹時血糖値」しか見ていない場合があります。
しかし糖尿病予備群や初期の糖尿病の場合、空腹時血糖値では正常範囲(基準値99mg/dL以下、126mg/dL以上では、糖尿病が疑われる)でも、食後の血糖値が高くなるケースがあります。
食後高血糖は、食後1~2時間の急激な血糖値の上昇が特徴です。健康な人の場合は、血糖値が上昇するとすい臓から適切な量のインスリンが分泌され、その働きによって血糖値が低下し、だいたい食後2時間後には空腹時の値に戻ります。
しかし、インスリンの分泌が少なかったり、働きが不十分だったりすると、食後2時間たっても血糖値が低下せず、高血糖の状態が続いてしまいます。
血糖値が140mg/dL以上の高い値が続く状態が食後高血糖です。
近年、さまざまな研究から、食後高血糖は重大な合併症発症のリスク要因となることが分かってきました。
食後高血糖の状態が進行すると、いずれ糖尿病になる可能性もあるので注意が必要です。
食後高血糖にひそむ病気
食後高血糖にひそむ病気の例として、がんの発症リスクを高める、動脈硬化などの原因となる活性酸素の働きを助長、血管の炎症、血管壁を脆(もろ)くさせる、高齢者の認知機能に影響を与える、糖尿病網膜症の発症リスクを高める、脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクを高める、頸(けい)動脈の血管壁が厚くなり動脈硬化の進展につながる―などがあります。
また、空腹時高血糖より、食後高血糖の方が、心筋梗塞や脳卒中といった心血管系疾患による死亡リスクが高いことも分かっています。
しかし、食後高血糖は、自覚症状もなく、一般的な健康診断で計測される血糖値は、空腹時血糖値のみのことが多いため、意識していなければ見逃してしまう恐れがあります。もちろん、血糖値は、空腹時だけ、食後だけのどちらか一方だけでなく、両方を管理することが大切です。
空腹時血糖値が正常な人が食後高血糖を確認する方法としては、空腹時の血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)をあわせて評価する方法があります。良好なHbA1cを維持することで、食後高血糖を改善し、糖尿病の発症や進行を抑えられます。
食事と運動で食後高血糖を防ぐ
食後高血糖を改善するために、食後30分から2時間の間の運動が効果的です。運動をすると筋肉でのエネルギー消費が増え、そのもととなる血中のブドウ糖が消費されるからです。
また、食後高血糖の原因の一つに、中性脂肪が過剰に蓄積され、肝臓や筋肉などでインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」という状態があります。中性脂肪の過剰な蓄積を減らすことができるため、運動はその意味でも効果的です。
ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動に加え、筋肉量を上げるための筋力トレーニングの両方を行うとよいでしょう。
また、食事の仕方にも工夫が必要です。糖質がゆっくり吸収されるように意識し、食物繊維が多く含まれる野菜や海藻類を先に食べたり、糖質指数(GI値)の低い食物を取るようにするなどしてみましょう。食物繊維と糖質を一緒に取ると、糖質の吸収が緩やかになり、食後血糖値の急激な上昇が抑制されます。
監修:寺内康夫
横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学
教授 診療科部長
血糖値の上昇を抑える食べ方
食後血糖値の急激な上昇を抑えるには、食べる量、質に加え、順番も大切です。食べる順番は、最初に食物繊維の多いものから食べるようにしましょう。特に昆布、わかめ、こんにゃく、キノコなど、水溶性の食物繊維は血糖値の上昇を抑える効果が高いといわれています。
また、早食いやドカ食いをしないことも大切です。早食い、ドカ食いは、血糖値が上がりやすいだけでなく、肥満になりやすくもなります。「セカンドミール効果」といわれる食べ方があります。その日、最初に食べたものが一番血糖値を上げ、2回目の食事はそれよりも血糖値の上昇が緩やかになるという性質を利用した食べ方です。食事の間隔をあまり空けずに適量の食事を取ることは、血糖値の上昇を抑える食べ方としては有効でしょう。
提供元:健康保険組合連合会(すこやか健保2021年11月号) **禁無断転載**
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