お知らせ
2023年03月14日
【すこやか健保☆定期便のご案内】“睡眠時無呼吸症候群”知っていますか?(3月号)

“睡眠時無呼吸症候群”知っていますか?

イラスト:睡眠時無呼吸症候群
サインは大きないびきと昼間の異常な眠気です

いびきがひどいと言われる、しっかり眠っているのに異常な眠気に襲われる、集中できずに仕事が手につかない…

もしかすると睡眠時無呼吸症候群かもしれません。

仕事や学業の効率が悪くなるだけでなく、車の運転や機械の操作を誤るなどトラブルを引き起こす原因にもなりかねない怖い病気です。

早くから睡眠時無呼吸症候群の治療に取り組んできた、東邦大学医療センター大森病院睡眠時呼吸障害センターの髙井雄二郎先生にお話を伺いました。

睡眠中に呼吸障害が起こるSAS

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中に呼吸が止まる〝無呼吸状態〟が繰り返し起こるために、熟睡できず、日中に異常な眠気に襲われる病気です。睡眠中の呼吸、つまり口と鼻での空気の出入りが10秒以上停止する状態を「睡眠時無呼吸」といいます。症状や合併症があり睡眠時無呼吸状態が1時間当たり5回以上起こる睡眠障害がSASです。

SASには、喉が閉じることで起こる「閉塞(へいそく)性」と、脳や神経の異常が原因で起こる「中枢性」があります。わが国ではほとんどが閉塞性です。

特徴的な症状は、睡眠時の〝大きないびき〟と日中の〝異常な眠気〟です。他に睡眠中に何度も目が覚める、起床時の頭痛やだるさ、うつ症状、性機能障害などが起こることもあります。特に日中の異常な眠気は仕事上のミスや学業不振に加え、交通事故や機械の操作ミスなどにつながることがあります。そのため自動車の運転免許取得時や更新時に、SASの有無の確認が行われています。

さらに怖いのが合併症です。特に無呼吸状態が引き起こす動脈硬化は、心筋梗塞や脳卒中などの発症率を高めるだけでなく、糖尿病や高血圧、不整脈の原因にもなります。

最も有効な治療法はシーパップ

イラスト:最も有効な治療法はシーパップ
SASを発症しやすい人の特徴は〝肥満〟です。肥満で首の周囲に脂肪がつくと、喉が狭くなるため、この状態で仰向けになって眠ると空気が通過する部分が閉塞して無呼吸状態になってしまうのです。ただやせていても、日本人は欧米人に比べて、顎が小さく、気道が狭い傾向があり、SASになりやすい体質と考えられます。飲酒や鼻炎症状がSASの誘引になることもあります。

SASの診断は簡易検査と本検査で行います。簡易検査では、患者さん自身が自宅で体内の酸素飽和度を測定する簡易型睡眠モニターを装着し、鼻の下にセンサーを着けて一晩眠ってもらうことで診断します。この検査でSASの疑いがあればポリソムノグラフィーという本検査を行い、診断を確定します。本検査では入院して酸素飽和度だけでなく、心電図や脳波、鼻や口の気流測定、腹部の動きなども測定します。

SASの治療では〝減量〟が重要です。ただ標準体重を目指す必要はなく、少しの減量でも症状の改善が期待できます。そして最も有効な治療法が、シーパップ(CPAP)です。睡眠時に鼻に専用マスクを当て、そこから空気を送り出して喉がふさがらないようにする治療法です。マスクを当てバンドで固定するため、眠れないのではと心配する人もいますが、慣れると問題なく熟睡できます。

ほかにも睡眠時にマウスピースを着ける、扁桃(へんとう)肥大が原因の場合は手術で患部を小さくするなどの治療法もあります。

SASは放置せず専門医の指導でコントロール

SASの予防に最も効果的なのは肥満防止です。鼻炎症状がある人は、耳鼻科を受診して症状の改善を目指しましょう。鼻炎症状があると口呼吸が多くなり、気道が狭くなって閉塞状態を引き起こしやすくなります。睡眠薬には、神経活動の低下をもたらし、気道を狭める種類があり注意が必要です。主治医とよく相談してください。低めの枕や横向きで寝ることも、気道の閉塞を招きにくいため、予防対策として試してみるのもいいでしょう。

SASは専門医の指導の下で症状をしっかりコントロールしていけば、日常生活に何ら支障はありません。車の運転や機械の操作などの仕事も、健常者と変わりなく行うことができます。ただ一方で、診断や治療の難しい病気でもあるので、SASに詳しい専門医を選んで受診することがとても大切です。

「睡眠時無呼吸症候群」予防のポイント

□ 適正体重を維持する

□ 鼻呼吸を心掛ける

□ 鼻炎症状がある場合は積極的に治療する

□ 睡眠薬の服用には注意する(医師への相談が必要)

□ 高い枕は避ける

□ 横向きに寝る

□ 睡眠前の飲酒は避ける

□ 禁煙する

監修:髙井 雄二郎先生

東邦大学医学部 呼吸器内科 准教授

東邦大学医療センター大森病院

睡眠時呼吸障害センター センター長

 

Column

子どものSASにも注意が必要です!

最近、子どものSASが増加しています。主な発症要因は“肥満”と “扁桃とアデノイドの肥大”です。扁桃もアデノイドも病原体から体を守る免疫機能を持つ部位ですが、肥大して上気道をふさぐとSASの危険性が生まれます。特に問題なのは成長への悪影響です。成長ホルモンは睡眠時に多く分泌されるため、きちんと睡眠がとれないと成長に悪影響をもたらすのです。またイライラや落ち着きがないなどの原因にもなります。

症状は大人と同様にいびき、睡眠中の無呼吸、口呼吸、寝起きが悪いなどです。ただ子どもは自分の不調をきちんと訴えることが難しいので、親や周囲の大人が気付き、治療につなげることがとても大切です。気になる症状を発見したら、すぐに専門医の診察を受けることをお勧めします。

健康マメ知識

SASを疑ったときは、何科を受診すればいいの?

家族やパートナーにいびきがひどいと言われたり、睡眠時間は取っているのに仕事中などに異常な眠気に襲われたりする場合は、SASの可能性があります。特に車の運転や機械操作などを行う職業の人は早めの診察をお勧めします。

ただ、SASの診断・治療には専門知識が必要なので、治療経験の豊富な専門医を探す必要があります。最近はSASの認知度も高まり、睡眠時無呼吸症候群外来や睡眠障害外来のある医療機関や、この病気に特化したクリニックも増えています。

インターネットで、日本睡眠学会に認定されている専門医のいる医療機関を調べましょう。そうした医療機関が近くにない場合は、呼吸器科、循環器科、耳鼻咽喉科などを受診して、専門医を紹介してもらうのもいいでしょう。

提供元:健康保険組合連合会(すこやか健保2023年3月号) **禁無断転載**

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