健康保険組合連合会の刊行誌「すこやか健保」より、みなさまに有用な情報を「すこやか健保☆定期便」として定期配信いたします。(毎月15日頃配信予定)
今回は、「 脳番地を知り理想の自分をデザインしよう! 」です。
みなさまの健康リテラシーの向上にぜひお役立てください。
脳番地を知り理想の自分をデザインしよう
近年、「脳番地」という考え方に基づいた脳のトレーニング法が注目されています。
脳番地とは、同じような働きをする神経細胞の集まりと、その神経細胞群と関連している機能の総称のこと。
これらを働きのタイプ別に、大まかに8つの系統に分け、理論的に脳を成長させることで、「苦手」を克服することができると提唱する脳内科医・小児科専門医の加藤俊徳先生にお話を伺いました。
脳番地ってなに?

そもそも脳は、神経細胞の集まる皮質と、神経線維が集まる白質で構成されています。神経線維が成長すると白質は太くなり、それに合わせて神経細胞が成長し、皮質の表面積が広がるという仕組みです。
MRIの画像で見ると、脳内はまるで木の枝が張り巡らされたような状態になっています。この「脳の枝ぶり」は、人によってさまざまで、1人として同じ形はありません。これが「個性」になるわけです。
神経細胞は、同じ役割を果たすものが集まって機能しています。脳全体をそれぞれの機能ごとに120に区分したものが「脳番地」です。この120の脳番地は、働きのタイプ別に感情系/思考系/伝達系/運動系/記憶系/聴覚系/理解系/視覚系の8つの系統に分類することができます。
スポーツ選手は運動系脳番地が発達していて、敏腕営業マンは伝達系脳番地と聴覚系脳番地が発達しているといった具合です。ただし、得意な脳番地や苦手な脳番地は、日々、変化をしていきます。スポーツ選手が引退をして解説者になれば、運動系脳番地より伝達系脳番地のほうが発達していくでしょう。
ということは、どの脳番地を育てるか意識して生活することで、「苦手」を克服したり、「得意」をさらに伸ばしたりすることが可能だということです。脳は使い方次第で何歳からでも成長することが分かっています。自分のどこの脳を鍛えたらよいのかを明確にし、トレーニングすることで、理想の脳、ひいては理想の自分に近づけることができるのです。
8つの脳番地を知ろう
神経細胞は、同じ役割を果たすものが集まって機能しており、働きのタイプ別に8つの系統に分類しています。
①【感情系脳番地】
感性や社会性に関係する脳番地。
喜怒哀楽を感じ、表現することに関わる。
②【思考系脳番地】
思考や判断に関係する脳番地。前頭葉にあり、脳全体の司令塔の役割を担う。
③【伝達系脳番地】
話したり伝えることに関係する脳番地。
左脳は言語系、右脳は非言語系を担う。
④【運動系脳番地】
体を動かすことに関係する脳番地。
出生前後から最も早く成長する部位。
⑤【記憶系脳番地】
覚えたり思い出すことに関係する脳番地。
海馬が短期記憶を、側頭葉が長期記憶を主に担当する。
⑥【聴覚系脳番地】
耳で聞くことに関係する脳番地。
主に左脳は言葉を担当、右脳は言葉以外の音を担当する。
⑦【理解系脳番地】
物事や言葉を理解するのに関係する脳番地。左脳は言葉を理解するときに、右脳は空間等を理解するときに働く。
⑧【視覚系脳番地】
目で見ることに関係する脳番地。
主に左脳は文字を、右脳は形を読み取る。
脳番地を刺激して理想の自分へ
脳の前方に位置する前頭葉には、感情系/思考系/伝達系/運動系の脳番地が分布しており、主に情報を発信する「アウトプット」に関わる働きをしています。
脳の後方には、記憶系/聴覚系/理解系/視覚系の脳番地が分布しており、主に情報を取り入れて処理をする「インプット」に関わる働きをしています。
脳番地ごとに役割があり、それらがネットワークでつながって循環しているのです。
自分の得手・不得手は、脳番地の成長の凸凹が影響しています。
例えば、人前で話すことが苦手な人は、聴覚系脳番地が弱い人が多いです。聞くことが苦手なため話すことも苦手という順番です。聴覚系脳番地を鍛えるためにラジオを聴くことをおすすめします。
また、音読も有効です。この場合も、声を出すことよりも、自分の声を「聞く」ことを大切にしましょう。また、助詞を強調して読むことで助詞に挟まれた前後の言葉が記憶しやすくなり、脳で聞く力が強化されます。声を出して読むので、伝達系脳番地の訓練にもなります。
人には得手・不得手があるものです。自分はどの脳番地が得意で、どの脳番地が苦手なのかを知り、楽しく続けられることから脳番地を鍛えていきましょう。脳は、楽しいことをしているときにだけ成長することを忘れずに。
監修:加藤俊徳先生
加藤プラチナクリニック院長
脳内科医 小児専門医 医学博士
Column
脳活性化のためにも不可欠な“よい睡眠”
中高年になっても、脳は鍛えることで成長を続けます。しかし、同じことを繰り返す日々が続くと、たとえ若くてもマンネリ脳になり、脳の機能は次第に衰えていきます。そうならないためにも、まずは、「動いて、聞いて、見る」。運動系/視覚系/聴覚系脳番地を積極的に働かせましょう。
「やる気が出ない」「ミスばかりする」「いつも不安だ」が続くときは、睡眠不足を疑います。昼間、脳を活性化させるためには、夜の深く十分な睡眠が必要です。昼間の活動が夜の睡眠に影響し、夜の睡眠が昼間の活動に影響します。まずはサーカディアンリズム※を整えることから始めましょう。
それでも脳の衰えを感じるときは、睡眠時無呼吸症候群が隠れているかもしれません。寝不足、運動不足は脳にとって大敵。脳活性化のためにはよい睡眠が不可欠です。
※体内時計やホルモンの分泌などから、24時間周期のリズムを示す概日リズム。
健康マメ知識
脳ドックで脳の状態を検査しよう
脳血管疾患により認知症のリスクが高くなることが指摘されています。厚生労働省のデータによれば、脳血管疾患の患者数は111.5万人(2017年)に上り、高齢になるほど増えています。最大の原因は、高血圧が長く続くことによる動脈硬化の進行です。脳血管疾患を防ぐには、高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈などの生活習慣病の治療、生活習慣の改善のほか、健康診断等で脳の状態を確認しておくことも重要です。脳ドックは、主にMRI(磁気共鳴画像診断)装置による画像診断で、心電図、頸(けい)動脈エコー、血圧脈波検査なども併せて受診する場合があります。
脳ドックは原則、自由診療となるため、費用は自費負担になります。ただし、健保組合や自治体から補助金や助成金が受けられる場合もありますので、確認の上、対象となる場合は忘れずに申請しましょう。
提供元:健康保険組合連合会(すこやか健保2022年12月号) **禁無断転載**
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