お知らせ
2022年10月14日
【すこやか健保☆定期便のご案内】健保法制定100周年を迎えて 医療保険制度の変遷と今後の課題! (10月号)

健康保険組合連合会の刊行誌「すこやか健保」より、みなさまに有用な情報を「すこやか健保☆定期便」として定期配信いたします。(毎月15日頃配信予定)

今回は、「健保法制定100周年を迎えて 医療保険制度の変遷と今後の課題 ! 」です。

みなさまの健康リテラシーの向上にぜひお役立てください。

 健保法制定100周年を迎えて

医療保険制度の変遷と今後の課題

今年は健康保険法(1922年4月22日公布)が制定されて100周年という節目の年に当たります。

特に61年の国民皆保険の実現以降、社会情勢などの変化や少子高齢化の進展などにより、時代の要請に応じて幾多の改正が行われました。

増大する高齢者医療費に対応するため、新たな法律の制定や制度の創設も行われました。

一方、2年以上も続く今回のコロナ禍を通じて明らかになった課題も多く、その解決に向けた対応も含めて、健康保険組合の果たす役割もさらに重要性が増しています。

この節目の年に改めて医療保険制度の大きな改正の流れを再確認するとともに、当面の課題などについて解説します。

国民皆保険実現以降の主要な改正

国民皆保険の実現以降、高齢者の経済的な負担を軽減するため、一部の市町村では独自に老人医療費の無料化が行われていましたが、1969年に東京都が在住の70歳以上の高齢者の窓口負担を無料にしたことで、全国的な広がりとなりました。政府も73年に老人福祉法の一部を改正し、原則70歳以上の自己負担を公費負担とすることで、老人医療費の無料化が実現しました。

結果として老人医療費の無料化は、社会的入院の増加、病院のサロン化などを招き、その医療費は80年には73年以前の4倍以上に膨れ上がり、高齢者が多く加入している国民健康保険(以下、国保)の財政悪化の原因となりました。

この問題を解決するため、83年に創設されたのが老人保健制度です。同制度の主な内容は、①今まで窓口負担が無料だった老人にも一部負担を求めること、②窓口負担を除く老人医療費を国・地方公共団体の公費、各医療保険者の拠出金により賄うこと、③疾病予防や健康づくりを含む老人保健医療対策を推進すること――の3つです。後に老人医療費への負担割合等が変更され、健保組合に重い負担が課せられ、これが組合運営の大きな支障となっていきます。

84年には被用者保険本人の定率1割負担の導入と退職者医療制度の創設が行われました。当時、勤め先を定年後、退職者が国保に加入することで、国保の医療費が増大し財政を圧迫していました。それを補うために国保に加入した退職者(~70歳)の医療費を健保組合等被用者保険全体が拠出して負担する仕組みが退職者医療制度です。これにより健保組合の財政はさらに厳しいものになります。その後も医療保険制度の財政安定に向け、被用者保険本人の窓口負担の定率2割、3割への引き上げや70歳以上高齢者の定率1割(現役並み所得者は2割、後に3割)窓口負担が導入されました。

2000年以降では06年に、①保険者による特定健診・特定保健指導の導入、②新たな高齢者医療制度の創設(①、②ともに施行は08年度から)、③保険給付の内容・範囲の見直し――が行われました。②については、75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度の創設と前期高齢者(65~74歳)の医療費の保険者間の不均衡を調整する仕組みの創設です。

背景にわが国の人口構成の変化が影響

これらの制度改正の背景にあるのが、わが国の人口構成の急激な変化です。戦後、国民皆保険の実現、健康状態や食生活の改善等もあり、平均寿命は飛躍的に伸び、現在は男女とも世界トップクラスです。その一方で深刻なのは出生数の減少です。団塊の世代(1947~49年生まれ)や団塊ジュニア世代(71~74年生まれ)の時には出生数が一時的に増えましたが、その後は減少に転じ、その結果わが国の人口も2010年の1億2806万人を頂点に減り続けています(図参照)。

出生数の減少は、高齢者を支える現役世代の減少を招き、同世代の保険料の過重な負担につながっています。政府も不妊治療の保険適用の拡大等少子化に着目した対策を打ち出していますが、残念ながら目に見える効果が出ていないのが現状です。引き続き少子化対策は必要ですが、医療保険制度を維持するための対策は待ったなしの状況です。

限られた時間に向けて今必要なこと

わが国は団塊の世代が全て75歳以上となる「2025年問題」が迫り、高齢化の進展と現役世代の減少という歴史的な難局に直面しています。一方、今回のコロナ禍で、従来の医療提供体制の基盤があまりにも脆弱(ぜいじゃく)であることも目の当たりにしました。当たり前だと思われていた「安全・安心で必要な時に必要な医療にアクセス」することができなかったからです。また、患者のニーズや利便性を高めるための医療情報のデジタル化が大変遅れていることも浮き彫りになりました。

今回の教訓も踏まえ、健保組合・健保連は、まず国民が身近で信頼できる「かかりつけ医」の推進とかかりつけ医制度の構築が必要だと考えています。また、医療費の適正化およびサービスの効率化、質の向上のために医療DXも推し進めなければなりません。これらの施策は、政府の「骨太の方針2022」(6月閣議決定)に盛り込まれ、ようやく実現に向けて緒に就いたばかりです。

健保法制定100周年を迎え、次の100年に制度をつなげるためには、限られた財源を有効に用いるために医療の重点化・効率化を図ることや、現役世代に過度に依存する現行の制度を見直し、全世代で公平に支えあう制度への転換が喫緊の課題です。健保組合・健保連はこれらの課題に取り組んでいくとともに、加入者への健康教育・広報によるヘルスリテラシー向上等に努め、健康寿命の延伸を目指していきます。

 

提供元:健康保険組合連合会(すこやか健保2022年10月号) **禁無断転載**

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保健事業チーム TEL:052-880-6201 E-mail:jigyou@chudenkenpo.or.jp